「オニキス」の古い伝承を調べてみますと、けっこうネガティブなパワーを秘めた石であるとあります。八川シズエ著『パワーストーン百科全書』によれば、「印章石として用いる人は心配事を抱え込み、悪夢を見るようになる」とか「相手に哀しみや恐怖、恐ろしい幻影、それに論争を引き起こさせる」といったことが『アラビア鉱物書』やプリニウスの『鉱物書』、アルベルトゥスの『鉱物書』等に記されていると引用されています。また、草野巧著『パワーストーン』でも昔のヨーロッパでは「恋人たちに不和をもたらす石」とされていたとあります。
でも、「オニキス」が人々の間で利用されてきた史実を見ますと、石が持つ美しい縞模様を活かした印章や「カメオ」がつくられています。特に「カメオ」は多くの女性に愛されてきたアクセサリーですから、前述のようなネガティブな面ばかりではなかったはずです。「オニキス」の名称が広義と狭義の間をさすらってきたように、「オニキス」のパワーに対する認識も移り変わってきたものと考えられるのです。
ところで、今日では誰一人「オニキス」を忌み嫌う人はいません。むしろ、「オニキス」のポジティブなパワーに注目し、それを上手に取り入れようと様々なアプローチがされています。私がいちばん確信しているのは、この石には高ぶった感情を静めてくれるパワーがあることです。もう少し具体的に言いますと、「あれもやろう、これもやろう」といったやや加熱気味になった感情を、ほどよくクールダウンさせくれるんですね。不思議なことに、「オニキス」が気になって仕方がないときは、決まって自分の処理能力以上の仕事を抱え込んで苦しんでいます。その状態を冷静に分析してみると、それは第三者によってもたらされたものではなく、自分自身の無計画さが招いているのですよね。
ですから、私は「オニキス」が近づいてきてくれたときは、一時的に仕事から離れ、現状を冷静に見つめ直すことにしています。すると、仕事のプライオリティーがはっきりと見えてきて、やるべきことの順番が自然と決まってきます。不必要なことは苦もなく捨て去ることができますから、とても落ち着いた気分で再び仕事にとりかかることができるのです。オニキスには「感情が昂ぶったときに身につけると理性的になれる」、「考えがまとまらず、結論が出ないときにこの石を身につけると論理的な筋道が見えてくる」といった効用が指摘されています。これはまさに私が経験し確信を持っている「オニキス」のパワーと同じものです。
あなたがもし、「オニキス」と出会い、どうしても身につけたいと思うようであれば、きっとあなたは必要以上に気負いすぎていて、その苦痛から解放されたいと思っているはずですよ。ブレスレットでも原石でもかまいません。掌に持って、目をつむり、頭の中を空っぽにしてみてください。気持ちが落ち着くまでそれを何回も繰り返してくださいね。たぶん気がついたときは、あなたの加熱した頭は程よくクールダウンされ、楽な気分になっているはずです。そして、やるべきことが自然に見てくるでしょう。