青春時代に夢中になったドラマの裏には私たちの知らない“ドラマ”がいっぱい。出演者ご本人を直撃し、今だから話せるエピソードをこっそりお届け!
■『水戸黄門』(TBS系・’69~’11年)
黄門さま(水戸光圀)が助さん、格さんを従えて諸国漫遊の旅先で世直しをする。42年にわたり、43部が放送された長寿時代劇。困っている庶民を助けるために悪党と戦い、最後に印籠を見せつけると一同ひれ伏し大団円。王道すぎるワンパターンな展開が醍醐味。
「’86年から25年近くもレギュラー出演した『水戸黄門』は、まさに私の人生を代表する作品。出演者、スタッフ含めて100人を超えるチームですが、家族のような存在です」
こう語るのは、黄門さまを支えるくノ一・かげろうお銀を演じた由美かおるさん(72)だ。
由美さんは、何度か『水戸黄門』にゲスト出演したあと、プロデューサーの逸見稔氏から「今までにないキャラクターを由美さんで作りたい」とオファーを受けた。
「『かっこいいと思うスタイルを考えて』と言われました。それで、アクションのある忍者だから、着物の裾をミニスカートのように短くして、それに合うようにベルトを巻いたり、バレエで使用するアミタイツをはいてみたりしました。足元はブーツにしたのですが、ファスナーが見えないようにデザインしてもらったんです」
同ドラマには欠かせない人気キャラクターとなり、歴代の黄門さまご一行との共演を果たした。
「レギュラー出演しはじめた当初は、西村晃さんが黄門さまでした。車で撮影現場にいらっしゃるのですが、ダンディで素敵。『パジャマでもちゃんとアイロンを当てないとダメなんですよ』と教えてくれるなど、几帳面な一面もありました。格さん役の伊吹吾郎さんは、フラメンコギターが得意で、パーティなどで披露するのですが、すごくかっこいい。助さん役で、のちに黄門さまも演じた里見浩太朗さんは、ゴルフがお好きで、杖を使ってゴルフのスイングをみんなに教えたり、“黄門コンペ”を開催したり。4代目黄門さまの石坂浩二さんはとても博識。杖で地面に難しい漢字を書いて『これ、なんて読むかわかる?』ってクイズを始めていました(笑)」
個性派ぞろいの俳優の中でも、かげろうお銀が存在感を示したのは恒例となった入浴シーン。檜風呂や岩風呂、五右衛門風呂など、毎回、美術スタッフがさまざまな風呂を用意してくれた。
「スタジオに入るときは、ベージュの水着の上にバスタオルを巻いていたのですが、スタッフはほぼ全員男性なので恥ずかしさがありました」
真冬はお湯が冷めるから、スタッフがポリバケツでお湯を次々に足してくれた。
「夏場は逆に熱くて。私が湯あたりをするものだから、休憩中は照明さんがバスタオルやレフ板であおいでくれたりしました」
そんなスタッフの助けもあり、入浴シーンは204回を記録。長年、『水戸黄門』に彩りを与えたのだった。
【PROFILE】
由美かおる(ゆみ・かおる)
’50年、京都府生まれ。’86年から’10年まで『水戸黄門』にレギュラー出演。50年以上変わらない体形の秘訣を『由美かおる ブリージング・レッスン』(白秋社)で明かしている