主人公・掛居の彼女役を務めた黒沢あすか 画像を見る

「『あすなろ白書』の撮影時、私は21歳で、今の事務所に入ったばかりのとき。事務所の社長に連れられて、ドラマプロデューサーのところにご挨拶しに行った直後、『あすなろ白書』にキャスティングされたんです」

 

出演経緯を振り返るのは、女優の黒沢あすかさん(53)。出演する役について、所属事務所にはこだわりがあったという。

 

「全話出演するよりも、出番は少なくても、はやてのごとくあらわれ、ドキッとするようなインパクトを残して、去っていくような役を希望していたようです」

 

そこで与えられたのが、主人公の掛居保(筒井道隆)と、園田なるみ(石田ひかり)の恋を邪魔する、砂田トキエ役だった。

 

「保の高校時代からの恋人ですが、保が大学生になって知り合ったなるみとの接近に嫉妬するわけです」

 

ことあるごとに『私のこと好き?』『どう思っているの?』と聞いたり、態度で示したりする面倒くさくて怖い女だ。

 

「なるみが保っちゃんの家に遊びに来たときに、肩をぺろっと出して『これが保っちゃんが愛してくれる体』と挑発するシーンにも挑戦しました」

 

撮影現場では筒井と石田と一緒になることが多かったが、プライベートな話はほとんどしなかった。

 

「筒井さんとはギクシャクした関係の恋人、石田さんとは恋敵という設定だから、現場では挨拶くらい。とくに石田さんはかなりタイトなスケジュールで、私から声をかけるのもためらわれるほどでした」

 

なかでも印象に残っているのは、保との別れのシーンだ。

 

「レストランで別れ話をしていて、最後に手に持っていたフォークで保っちゃんの手の甲を刺してしまうんですね。結局、なるみへの思いが揺るがない保を見て、トキエは河川敷で別れを告げ、後ろ手でバイバイして立ち去る。私にとって最後の出番となるシーンです」

 

数話のみの出演ではあったが、当初の狙いどおり、記憶に残る役となった。

 

「だからこそ、いまだに『あすなろ白書』には、全話出ていたと勘違いされるんです。嫌われかねない役でしたが、トキエの女心に共感してくれる人も多かったんです」

 

メインどころの役ではなく、木村拓哉とも話をする機会はほとんどなかったが、やはり役のインパクトが強かったのだろう。

 

「『ギフト』(フジテレビ系・1997年)に出演した際に『あのときは共演させていただき、ありがとうございます』とご挨拶してくださり、光栄に感じたのを覚えています」

 

『あすなろ白書』(フジテレビ系・1993年)

同じ大学に通う、掛居(筒井道隆)たなるみ(石田ひかり)をはじめとした「あすなろ会」のメンバー5人による青春群像劇。取手(木村拓哉)がなるみを後ろから抱きしめて(あすなろ抱き)、「俺じゃダメか」と言うシーンは、木村拓哉という大スターが誕生した瞬間だった。

 

【PROFILE】

くろさわ・あすか

1971年生まれ、神奈川県出身。1990年に『ほしをつぐもの』で映画デビュー、数多くの映画、ドラマで活躍する。テアトル新宿ほか全国で公開中の映画『敵』に出演中。また現在放送中のABCテレビ・テレビ朝日系列ドラマ「フォレスト」レギュラー出演中。

 

次ページ >【写真あり】1993年のヒットドラマ『あすなろ白書』のキャストが全員集合

【関連画像】

関連カテゴリー: