「状況はコントロールできている。汚染水の影響は福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメートルの範囲内で完全にブロックされている」と五輪招致の最終プレゼンで語った安倍晋三首相(58)。東京五輪決定の後押しとなったこの一言に、疑問の声が噴出している。

 

「もし完全にブロックして外に出ないのならば、港湾内の水位は上昇していくはず。コップに水を入れ続けると一杯になるのと同じことです。しかし、現状はそうなっていない。港湾内と外の水位が同じなのです。つまり、港湾内の汚染された水は外に流れ出ているということになります」と反論するのは、環境水理学に詳しい平田健正・和歌山大学理事だ。

 

現在、1日に1千トンの地下水が高台から海に向かって流れている。うち400トンが福島原発を通過する際に汚染され、残り600トンのうちの半分は事故直後に漏れた汚染水と混ざって海へ流出しているという。また原発内から組み上げた“超高濃度”汚染水の保管用タンクは2年間で1000基以上に。今のペースでいけば五輪開催の2020年には4500基という膨大な数に膨れ上がるが、ここから直接汚染水が漏れ出ていたことも発覚している。

 

つまり2つのルートから汚染水は流出しているのだ。海への流出対策としてシルトフェンスと呼ばれる水中カーテンが設置されるなどしているが、完全には防げていないようだ。

 

「地下水の流入自体を防ぐべく、地面を凍らせる凍土遮水壁を作ろうという案も浮上しています。たしかに地下30メートルまで凍らせることができれば可能ですが、別の問題もあります。それは雨水。この点はほとんど議論がなされていませんが、地表面からの雨水の流入を防ぐことができなければ結局同じことです」(平田理事)

 

完全な対策がない以上、汚染水の増加を止めることはできない。これではとても「コントロールできている」とはいえないだろう。五輪招致のために首相が言い張った“その場逃れの発言”について、放射能汚染に詳しい藤田祐幸・元慶応大学准教授はこう語る。

 

「国際的な大ペテンとしか思えません。首相は湾外に影響がないことの理由として、福島近海での汚染濃度がWHOの水質ガイドラインの500分の1だったことを挙げています。しかし、これは海水に希釈されただけ。流出した莫大な放射能の絶対量が変わらない以上、海洋汚染は止まらないのです」

 

海外の専門家からは「汚染水は希釈して海に流すしかない」との意見も出されているという。五輪開催まであと7年。首相の真価が問われるのはこれからだーー。

関連カテゴリー: