「中国では10月下旬からPM2.5の濃度が急激に高まっています。10月から家庭で暖房をつけ始め、燃料の石炭使用量が急増したため、煤煙が大量に放出されたことで大気汚染が拡大したようです」

 

そう話すのは、大気化学を研究している東京農工大学大学院の畠山史郎教授。11月以降、中国から日本へのPM2.5の飛来が急増している。大気汚染の健康への影響を研究している京都大学医学部・山崎新准教授は、まだ研究段階だと前置きしながらも、PM2.5の健康被害についてこう語る。

 

「ぜんそくの発症者数が大幅に増加するという論文など、PM2.5の健康被害を示す研究が海外を中心に多く発表されています。PM2.5はごく微小な粒子のため、肺の奥や血管にまで侵入し、動脈硬化や脳梗塞などの循環器系疾患を引き起こすことも考えられます」

 

さらに、大気汚染物質を研究する埼玉大学大学院理工学研究科の王青躍准教授は、呼吸器系や循環器系の疾患だけでなく、発がんの危険性についてこう警鐘を鳴らす。

 

「PM2.5の主成分のひとつである硫酸塩などは化学反応で発がん性物質に変化しますので、肺がんのリスクは当然高まります。中国で計測されている汚染濃度だと、都市部人口の3〜4割以上の人々がこれらの健康被害にさらされているといっていいでしょう。日本でも、今後のPM2.5の数値に注意しなくてはなりません」

 

WHO(世界保健機関)の専門組織・国際がん研究機関は10月17日、PM2.5など大気汚染物質による発がんリスクを5段階の危険度のうち最高レベルに分類したと発表した。国際がん研究機関は、「PM2.5が肺がんを引き起こす十分な証拠がある」とも強調している。

 

「WHOの発表から3週間後の11月6日、中国東部に住む8歳の少女が肺がんと診断されたことを中国の通信社が報じました。この少女は道路に面した自宅で、自動車の排ガスなどから発生したPM2.5などの有害物質を長期間吸っており、それが肺がんの原因だと医師は指摘したのです」(中国在住のジャーナリスト)

 

中国での健康被害は、肺がんだけにとどまらない。

 

「中国政府系のシンクタンクである中国社会学院は、PM2.5などの有害物質が引き起こすのは呼吸器系の疾患だけではなく、生殖能力にも悪影響を及ぼすと発表しています」(前出・中国在住のジャーナリスト)

 

気圧配置により今後、さらに西日本を中心に大量のPM2.5が日本に飛来するのは確実。日本でも『肺がん』や『不妊症』などの被害も十分に予想される。発がんや不妊の危険から家族の身を守るためにも、大気汚染の情報には、これまで以上に注意を払いたい。

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