「盆踊りなんて……と最初は思ってました。でも、去年やってみてハマった自分にも驚いたけど、会場のみんながグルーブしてるのを見て、これだ!って確信したんです。普通のライブは演奏者に視線が集まるけど、盆踊りは広場で踊る1人1人が主役。みんなステージに背を向けて思い思いに踊ってる。僕らが『プロジェクトFUKUSHIMA!』で目指してきたことです」

 

こう語るのは、昨年NHKの朝ドラ『あまちゃん』のテーマ曲や『潮騒のメモリー』を作り、音楽でも社会現象となるほどのブームを作った音楽家の大友良英さん(54)。福島市で10代を過ごした大友さんは、東日本大震災直後から故郷に駆けつけ、復興支援の『プロジェクトFUKUSHIMA!』を仲間と立ち上げた。

 

昨年8月15日には、初めて福島駅近くの広場で「納涼!盆踊り」を開催。地元・福島だけでなく日本中から5000人が集まる大盛況となった。4回目を迎える今年も同じ日時・場所での開催が決まっている。7月23日にはCD『ええじゃないか音頭』を発売。表題曲はじめ「地元に帰ろう音頭」など全6曲が盆踊り曲という異色作だ。

 

「これから、盆踊りブームが来ます!」と強気な発言の裏には、大友さんならではの分析があった。

 

「『炭坑節』も『東京音頭』も地域限定ではなく、誰でも踊れるようにレコード会社が仕掛けてヒットさせた歴史があります。いわばポピュラー音楽の原点。大人も子供も、労働者も社長さんも、地方も中央も、考えが違う人同士もいっしょくたになって踊って楽しめるもの。盆踊りは、今の福島や日本に求められている象徴だと思うんです」

 

震災から4年目を迎えた福島の現状については。

 

「状況が見えなかった1年目とは違い、放射能の情報なども個々に理解して、福島に住み続けようと決めた人、離れて暮らすことを選んだ人、それぞれに覚悟の時期を迎えようとしています。だから、心配なのは分断が起きること。『ええじゃないか音頭』の歌詞ではないけれど、“オラの地元もいい”“あいつの地元もいい”でお互いを尊重し自立を目指して行くことが大切です」

 

だが、自立の道は険しい。

 

「僕たちの活動でも、助成金が3年でストップし、これからが正念場。だからこその盆踊りでもあるんです。今年も協賛金を募っていますが、僕が協賛してくれた人の名前入りの“のぼり旗”を手書きして作ります。会場に風呂敷を敷きつめるスタイルは、僕らのオリジナル。この福島発の盆踊りを引っ提げ、呼ばれれば日本中どこへでも行きますよ。目指すは“盆踊り興行師”かな」

 

盆踊りでポジティブな福島を発信するというねらいは的中。今年は各地から招待が続々と届き、東北を中心に北海道や岐阜など全国で福島発の盆踊り大会が開催される予定だ。

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