2月17日、東京・国立代々木競技場第1体育館で「rooms」が開催初日を迎えた。roomsとは、インポートのアクセサリーや衣類の販売などを行う「アッシュ・ペー・フランス」が主催する合同展示会。30回目の今年、500ブランドが出展するなか、福島の女のコたちがいた。

 

「このピアスやネックレスは、福島県の川俣町でつくられた『川俣シルク』を天然の水晶に閉じ込めました。川俣町はもともと養蚕がさかんで、齋栄織物さんという地元企業がつくる『フェアリーフェザー』は世界最薄。髪の毛の6分の1の細さの絹糸を、今回は使用させていただいたんです」

 

こう語るのは今回、ジュエリーブランド・HITOTOKIを発表した女子の暮らしの研究所(女子クラ)を運営する、株式会社ガールズライフラボ代表、日塔(にっとう)マキさん(31)。

 

もともとは、地元郡山のコミュニティ放送「ココラジ」でパーソナリティを務めていた。しかし震災後に、女のコたち自身が福島から「暮らしの見直し」について発信する場を作ろうと、女子クラを設立。かわいい女子たちのパワーは、時代の突破口になるという信念のもと、現在の活動に至っている。本誌は、設立直後の’12年からその活動を追っていた。

 

「女子クラも、なんとか自立できるようになりました(笑)。やっぱり大きかったのは’13年に『ふくいろピアス』を発売したこと。ピアスだけで’14年は800万円以上の売り上げがありました」

 

ふくいろピアスとは、会津木綿にアクリル加工を施し「そらのいろ」「たいようのいろ」などストーリーを持たせた8色展開のピアス。通販や復興関連イベントで話題となり、いまや主力商品だ。これがroomsの担当者の目に止まり、昨年9月に初出展。そこでも好評だったことから、アッシュ・ペー・フランスがプロデュースに入り、今回のHITOTOKI誕生にいたった。

 

「日塔さんは『復興、復興!』ではなく、ちゃんとデザインのよいものを出せる人ですし、何より明るくてポジティブ。福島のイメージを引っ張る存在だと思います」(roomsディレクター・石塚杏梨さん)

 

女子クラは、確実に成長を遂げ、彼女たちに注目する人も増加。先日はココラジで、大阪の報道番組『ラジオフォーラム』の出張収録が行われ、そのゲストとして日塔さんが招かれた。

 

「すてきな若い女性が現れましたね。考え方も柔らかいし、商品開発などのアイデアも面白い。こういう人に復興の中心を担ってもらいたいと思います」(『ラジオフォーラム』のパーソナリティ・石井彰さん)

 

しかし、福島には新たな課題も生まれている。日塔さんは言う。

 

「先日、福島第1原発を視察したのですが、『廃炉に向かって進んではいるものの、結局、きれいなところしか見せてもらえなかった』とモヤモヤしていたんです。そこに汚染水漏れのニュースがあって、すごくショックでした。安全かどうかなんて基準は決めてくれなくていいから、本当の真実を教えてほしい。そのうえで私たちが、自分で安全かどうか決めればいい。同時に、誰かが決めた基準に乗っかるのは、とても怖いことだと思いました。自戒も含め、自分で考える人が増えればいいなとも思います」

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