「自然って、女性だと思うんです。女性はたまに抱きしめてあげないと、枯れちゃうでしょう?それは、子供も自然も同じなんです。自然と触れ合い、五感で抱きしめる。そうすることで、自分にも、もっと自信がもてるし、自分自身も好きになれるんじゃないでしょうか」

 

そう語るのは、静岡県の伊豆半島最南端で活動する堀直也さん(38)。『エコサーファー』代表として、サーフィン、シュノーケリング、キャンプなど、多種多様な自然を満喫する体験「冒険くらぶ」を企画・運営。なかでも、堀さんがユニークなのは、「ビーチマネー」事務局長としての活動だろう。

 

砂浜に流れついたガラス片のうち、波や砂、砂利にもまれて自然に角が取れ、直径が3センチ以上あるものを「ビーチマネー」と呼び、ハワイも含め、現在115店舗の加盟店に持っていくと、各店独自のサービスが受けられる。

 

そのスタートは、海を奇麗にしようというエコ活動。ビーチでゴミ拾いをするなかで、色や形のキレイなガラス片を見つける楽しみをビーチマネーに発展させた。

 

今年4月には、茅ヶ崎市でビーチグラス(ガラス片)やシー玉(球形になったガラス片)のコンテストを開催。参加者が持ち寄ったビーチグラス一つ一つを手に取ると、堀さんは力のこもった感嘆符で、「うっわぁ!キッレイだなぁ」「すてきじゃないですか!」と叫ぶ。その弾む声に、参加者たちの顔がパッと明るくなる。堀さんは、人を包み、癒し、元気にするオーラを放っていた。

 

子供向けの「冒険くらぶ」はリピーターが増えている。サーフィンのほか、カブトムシ捕りや林業体験など、山や森も楽しめるのは、南伊豆ならでは。サーフィン教室の前、みんなで行うのが「ビーチクリーン」。要は近辺のゴミ拾いなのだが、約15分、子供たちは自然を感じ、環境についても体感として学んでいく。

 

「サーフィンでいちばん大切なのはバランス。調和なんです。波、風、サーフボード、そして自分。4つのバランスが上手にとれると、ボードは安定し、加速します。今日は風が強いからやめようと、引く勇気も大切。常に謙虚でないと、大波にのまれて、痛い目に遭う。まさに人生と同じです。自然のなかにすべてがある。だから、僕は自然と共存していきたいんです」

 

’04年夏、堀さんは自然の大切さを多くの人に伝えたいと、フリーペーパー『エコサファー・マガジン』を発行。創刊号にこう書いた。

 

《湘南の海に入るときは目を閉じ、けっして海水は飲んではいけない(略)そんな海はもうたくさんだ!》《「自然と遊ぼう!」(略)それが環境問題を解決するいちばんの近道であるとエコサーファーは考える》

 

堀さんは、豊かな五感で自然を愛し、自然と共存する道を模索し続ける。人や自然が、殺伐とした現代社会の中で、壊され尽くすことのないように−−。

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