「この『イノベーション・コースト構想』を成功させ、福島県に新産業を創出して、雇用を生み出したい。2020年東京オリンピック大会を当面の目標として、復興に取り組んでおるところです」

 

福島の復興政策について説明するのは、内閣府原子力災害対策本部・原子力被災者生活支援チームの竹田憲氏。「イノベーション・コースト構想」とは、福島第一原発事故で避難指示が出された福島県の被災12市町村を中心に、廃炉関係などの最先端技術を集積させ、地域再生を目指そうという復興構想だ。

 

政府が「オリンピック開催までを目標」にして、急ピッチで進める復興計画。しかし、その陰では、避難者が住む借り上げ住宅や仮設住宅の無償提供の打ち切りが決まっている。いまだ線量が高い地域に戻らざるをえない福島の被災者。さらに戻っても従来のコミュニティは崩壊し、先が見えない生活に不安は募る。まさに政府による“棄民政策”が進んでいるのだ。

 

「親にとっての本当の復興は、子供が被ばくの影響を受けることなく元気に成人し、幸せな人生を送っているのを見届けられたとき。それまでは安心できません。いまだに、飯舘村のウチの裏庭では毎時6マイクロシーベルトもあるんです。そんな自宅に戻れるわけがないでしょう」(飯舘村から福島市に避難中のYさん・30・2児の母)

 

避難指示が解除される区域の住民は口々に不安を語る。しかし、住民の心配をよそに、政府は今年6月、「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」という指針を閣議決定した。「年間1ミリシーベルト」と法令で定められているにもかかわらず、この指針では「年間被ばく量20ミリシーベルトを確実に下回る地域は、’17年3月までに避難指示解除する」と明記。

 

また、東電から避難指示が出ている地域の避難者に支払われている精神的損害賠償(1人10万円)も’18年3月に打ち切られることが明記。さらに、これらの指針に合わせて、原発事故以降、避難者に無償提供されてきた借り上げ住宅や仮設住宅制度も、’17年3月から順次、打ち切ることが決まった。

 

政府は、「被災者が元の生活に戻れるよう自立支援を行う」と言っているが、被災者からは、「国や東電が生活を奪っておきながら、“自立支援”だなんておこがましい」「住宅支援まで打ち切るなんて、事実上の兵糧攻めだ。国はわれわれを捨てるのか」と、いった怒りの声も聞こえてくる。

 

しかし、住民の不安をよそに、福島県自体が、オリンピック誘致に躍起だ。福島市でも野球やソフトボールの誘致の予定がある。楢葉町にあるサッカーのナショナルトレーニングセンター「Jヴィレッジ」は、原発事故以降、原発収束作業の中継地点となってきたが、福島県は’18年までにJヴィレッジを再開すると明言。オリンピックのキャンプ地として選手団を呼び込もうと、約1億5千万円の予算を付けている。

 

飯舘村の酪農家、長谷川健一さんが団長を務める「原発被害糾弾 飯舘村民救済申立団」は、国に対して、完全賠償と生活再建を実現させるための申し立てを行っている。この申し立てに、飯舘村民の約半数にあたる2千837人が参加。

 

「避難指示が解除されたら、われわれが住む仮設住宅や借り上げ住宅の支援も打ち切り。村に帰らざるをえない。でも、汚染された土地で作物を作っても、売れないから生活は成り立たねぇ。このままじゃ棄民だ。そう気づいたから、約半数もの村民たちが、申し立てに参加することになったんだ。とにかく国の言いなりになってハコモノをつくる前に、村民の生計が成り立つように、国や東電に補償させるほうが先だろう」(長谷川さん)