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「不倫相手と出会うきっかけは、職場や同窓会、PTAなどが多いですね。最近はSNSでの出会いも増えているようです。“芽”は身近なところにあるということです」

 

こう語るのは、『判例による不貞慰謝料請求の実務』(弁護士会館ブックセンター出版部LABO)の著者である、中里和伸弁護士。著書の中では、夫が妻に支払う慰謝料ではなく、不倫された妻が不倫相手の女性に請求する慰謝料についての判例が網羅されている。その数、593件!そこで中里弁護士に、意外な結果となった慰謝料争いを解説してもらった。

 

【ケース1】

旅館を経営するA子さんは80代。彼女が、同じ80代の夫の不倫に気づいたのは、不倫相手の女性が亡くなったあとのことだった。しかも、相手は彼女の姪にあたる女性だった。夫は結婚直後から、50年以上も不倫を続けていた。夫は、旅館に住み込みで働いていた姪の元に足繁く通っていたという。

 

A子さんは精神的ショックを受け、ついには、夫と離婚を決意するほど険悪な仲に。姪はすでに死亡しているため、A子さんは、姪の遺産を相続した彼女の姉妹3人を相手に、慰謝料を請求した。これに対し東京地裁が出した判決は、事実上満額となる300万円の慰謝料支払いを姉妹に命じるものだった。

 

「不倫相手が亡くなったあと、裁判に訴えるケースは珍しいです。遺産を相続した姪の姉妹は、いっさいの権利と義務を引き継いでしまっているため、たとえ不倫を知らなかったとしても、支払い義務があることになります。これは、亡くなったあとに借金がわかったケースと同じ。300万円という慰謝料は高いと感じるかもしれませんが、不倫の期間が50年以上という長い年月にわたっていたことが考慮されています」(中里弁護士)

 

【ケース2】

日本を代表するオペラ歌手・B男は持病のため、セックスができない体に。そんな彼がC子と出会ったのは、個人レッスンの場だった。講師と生徒の関係を超えた関係は短期間だったが、彼はC子宅をたびたび訪問。肉体関係こそないものの、C子が彼にマッサージを行ったり、下着姿で抱き合ったり、さらにはC子の手がB男の“体”に触れたりすることもあったという……。

 

こうした関係が妻に発覚し、B男は慰謝料500万円を支払った。夫婦関係の破たんは免れたが、妻はC子に対し、「不倫」の慰謝料として700万円の支払いを求め、訴えた。東京地裁は、セックスがなくても、妻が家庭生活を平和に維持する権利を侵害されたとして、慰謝料150万円を認定。しかし、妻がすでに夫から500万円を受け取っていたことで、精神的苦痛は慰謝されたと判断され、支払う必要はないとされた。

 

「裁判においては、性行為が認定されなくても不倫と認められるケースが多いです。このケースでは、夫は相手とソウルへ旅行に行き、ひとつの部屋でチェックアウトまで過ごしたことも明らかになっています。妻の立場から見ると、夫がほかの女性とホテルで過ごすこと自体が精神的苦痛になるのでしょうね」(中里弁護士)

 

妻が夫の不倫相手に慰謝料を請求し、認定される慰謝料の平均は100万〜300万円ほどだそう。

 

「夫に不倫されてしまった方は、感情的にならず速やかに専門家に相談を。ご自分で対処しようとすると、後々に不利になってしまうこともあります」(中里弁護士)