「電力自由化の際、『電気・ガスのセット割』を設定した会社もたくさんありましたが、電気代だけが値引きされて、ガス代は値引きされませんでした。しかし今回のガス自由化によりガス代も安くなります。セット割にすれば、かなり割引率も高くなるのです」
こう話すのは、光熱費の比較サイトを運営する「エネチェンジ」副社長の巻口守男さん。’16年4月の電力自由化に続き、4月1日から都市ガス自由化がスタートした。一口にガスと言っても、一般家庭で使うガスには「都市ガス」と、「プロパンガス(LPガス)」、そして70戸以上の団地などの敷地に置くガス発生設備から供給する「簡易ガス」の3種類がある。
今回のガス自由化で対象になるのは、都市ガスを使っている家庭だ。都市ガスは、輸入した原料のLNG(液化天然ガス)を陸揚げ後に、気化、臭化などの工程を経て、導管を通して各家庭に供給される。
都市ガス自由化で、最も値下げ競争が激しいのが関西地区。新規参入する関西電力(関電)と大阪ガス(大ガス)が火花を散らしている。昨年の電力自由化で、関電が奪われた電気契約件数は50万件。このうち大ガスに25万件が流れたという。
昨年9月、定例会見で関電の岩根茂樹社長は、「われわれは挑戦者だ。大阪ガスよりは競争力のある料金を意識している」と、宣言。初年度の顧客獲得目標宇は20万件以上を掲げている。顧客を取り込むために、料金比較のためのシミュレーションの受付けをいち早く開始し、豪華賞品が当たる「関電ガスへようこそ!」キャンペーンを3月末日まで実施した。
昨年12月下旬に関電が大ガスの一般料金よりも安いプランを発表したところ、年明けには今度は大ガスが値下げを発表。その1週間後には関電が「電気とガスのセット割」の下げ幅をさらに拡大させる??というように、消費者にはうれしい価格競争が起こっている。
さっそく、気になる料金を見てみよう。エネチェンジの計算によると、3?4人世帯(1年間の電気使用量は5,033kWh、ガス使用量は506立方米と想定)では、1年間の電気代が15万710円、ガス代は8万464円で、合計23万1,174円だった。
これを関電の「なっトクプラン」に切り替えると、年間で1万3,740円も安い21万7,434円に!
「関電は、’18年1月31日までにプランに加入すると翌’19年4月分までのガス料金が1%引きになる『早期契約割引』を実施しているので、割引幅が大きくなりました」(巻口さん・以下同)
これに対して大ガスは、「GAS得プランもっと割料金」を発表。同じく3?4人家族のケースで、従来の電気代・ガス代と比較すると、1年間で9,847円安い、22万1,327円となった。単純に比較すると、関電のプランのほうが安いという結果に。
値引きばかりではなく、サービス競争も熾烈だ。
関電は会員サイトに登録すると電気料金1,000円につき8ポイント、ガス料金1,000円につき5ポイントがもらえる「はぴeポイント」を実施。サイトにログインして省エネアドバイスを利用すると、毎月5ポイントたまるオプションもある。たまったポイントは電気・ガス料金の支払いに充てることはできないが、200種類以上のアイテムと交換できたり、waonポイントやnanacoポイントなどと交換できたりするのだ。また水漏れやトイレ詰まりなどのトラブルに24時間365日対応する「はぴe暮らしサポート」を月額108円で利用できる。
いっぽう大ガスは、ポイント還元サービスはないものの、突然の住宅トラブルにかけつけてくれて、故障の診断や簡易手直しをしてくれる「住まいの駆けつけサービス」を無料で利用できるという。さらには健康上の不安などを看護師に相談できる「暮らしの応援サービス」を月216円で提供するなど、オプションも充実している。
はたして、関電の巻き返しなるか。両社の今後に注目したい。