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「5月24日、市場問題プロジェクトチーム(以下「PT」)で提案された『第1次報告書案(案)』中の『築地改修案』に、築地市場敷地内にレストランや見学コースなどのレジャー施設を設け、さらに“ツインタワー”を建設するというプランがありました。これは“築地市場のテーマパーク化”。築地を売却せず、市場を自立させる大胆な“ウルトラC”案といえます」

 

こう話すのは、市場問題を取材しつづけ10年になるジャーナリストの池上正樹さん。6月23日の告示まで3週間を切った東京都議会議員選挙の公約として、都議会自民党は「早期の豊洲移転」を明言。これに対し、小池都知事の会派・都民ファーストの会は「総合的な判断」と明言を避けている。

 

そんななか、築地、豊洲、両市場の事業の見直しや、今後の市場のあり方などについて検討し、その結果を都知事に報告するPT(座長は小島敏郎氏)の会議が開かれた。そこで提案された“築地テーマパーク化”とは一体どのようなものなのだろうか。

 

「開場したら毎年100億円もの赤字が出ると試算された豊洲市場に移転せず、老朽化している築地市場を敷地内の空いている土地を利用し運営、もしくは一時的にどこかに移転して改修する、という案です。案に盛り込まれている“ツインタワー”とは、テナント用の高層ビルで賃料を確保する選択肢です」

 

さらに隅田川沿いに眺望のいいレストランなどをオープンして築地のブランド力をアップさせ、日本中、ひいては全世界からの集客も狙っているという。“汚染”が危惧される豊洲市場。“移転中止”への秘策ともいえるこの案は、さながら都知事側から都議会自民党に対しての“先制パンチ”のようにも映る−−。

 

このプランをどう捉えているのか、26日の会見で、本誌記者が都知事を直撃質問すると、小池都知事はこう答えた。

 

「築地のブランド力というのは、国内外で誰もが認めるところで、先日も『シャネル』社長のリシャール・コラスさんが《築地のブランド力のすごさ》に言及されたことを知りました。一方で、老朽化していることも事実で、環境の『安心・安全』について科学的、法的に調査を進めていこうと思います」

 

さらに、築地を「東京湾に面した非常に夢のある地域」としたうえで、こう続けた。

 

「船旅などでも水辺をもっと活用すべきではないかと。PT案は、『今後の築地の展開にはいろいろな考え方がありますよ』とご提示いただいたものだと思います。築地ブランドをどう生かしていくのかは、市場のあり方の戦略そのもののひとつ。『市場の持続可能性』について、さまざまな観点から進めているところですので、いろいろな案を私は歓迎したいと思っております」

 

これまで豊洲移転か築地改修かを、PTや専門家会議からの報告を受けたうえで「総合的に判断する」と言ってきた都知事。今回も言葉を選んで明言は避けたものの、「築地テーマパーク化」案に関しては“好感触”の姿勢を見せた。

 

築地存続に加え、ブランド力を生かした一大レジャー施設化。実現可能性はどれほどなのだろうか−−。都の財政事情に詳しい経済評論家の加谷珪一さんが、次のように分析する。

 

「豊洲市場に移転した場合、毎年の赤字が100億〜140億円と試算されています。仮に140億円の場合、都民1世帯あたりに換算すると毎年2,100円ずつの負担となります。一方、築地市場は毎年1億〜20億円の赤字と試算されますから、年間20億円として、1世帯300円ずつ。豊洲の『7分の1』の負担ですみます」

 

さらに、ツインタワーやレストラン、レジャー施設などのオープンによる収入も含めて試算してもらった。

 

「ツインタワーでのテナント運営による収入や、規模の大きな飲食街がオープンしたときの収入を合わせて、試算されている赤字の『20億』は楽々クリアできるでしょう。すると都民の実質負担は『0円』になるんです。ミシュラン店や一流ブランドが出店して結集したら、大きな利益が見込めるブランド力が築地にはあります。築地改修と豊洲開場の費用を比較してみると、築地に分があるように見えます」

 

築地仲卸業の女性グループ「築地女将さん会」(山口タイ代表)は「都知事にはご理解いただき、豊洲移転を中止し、築地改修の判断を」と強く要望している。果たして都知事の「総合的な判断」は都議選前か、後か、いつになるのだろうか−−。

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