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加工食品の原材料も、なるべく国産にこだわるという人も多いだろう。だから原産地が表記されることは大歓迎――なのだが、新しく始まった原産地表示制度は、なんだか紛らわしい! なんでこんなことに?

 

「国産またはアメリカ産」、「国産または輸入」、「国内製造」。いずれの表示も、国産の原材料が入っているとは限らない。昨年9月1日から実施された「加工食品の原料原産地表示」の全面義務化が“まやかし”と揶揄されるゆえんだ。その背景を、食品問題に詳しい垣田達哉さん(消費者問題研究所代表)の解説で読み解いていこう。消費者庁が基本としている原産地表示は、その国名をしっかり明記するもの。

 

「原産地が単一国なら簡単ですが、たとえばポークソーセージのように、数カ国の原材料(豚肉)を混ぜて作る商品もあります。その場合、配合重量の多い国順に、たとえば『アメリカ産、国産、カナダ産』と表記。国名の間が『、』で表示されているときは、表示のすべての国の肉を混ぜて使用しているという意味です(3カ国以上の原材料が使われている場合、3カ国目以降は『その他』と略して表示されることも)」

 

しかし今回、それにとどまらない例外表示も認められた。

 

「例外表示のポイントは3つ。1つめが、原産地が3カ国以上の場合、国名を記さず『輸入』とまとめて表記してよいという“大くくり表示”が認められたこと。2つめに、仕入れ国の変更などが多い場合などに、国と国を『または』でつなぐ“可能性表示”も許されたこと。先の『国産またはアメリカ産』の場合、国産100%、国産とアメリカ産の混合、アメリカ産100%、いずれでもOK。つまり“国産”の文字がありながら“国産ゼロ”の可能性もあるのです」

 

3つめのポイントが、この“大くくり”と“可能性”を合体した「国産または輸入」という表示。

 

「この『国産または輸入』という表示は、国産と3カ国以上の外国産、そのいずれかが使われていることを意味します。これでは極端な話、地球上のあらゆる国の原材料が含まれてしまうのです」

 

加えてもうひとつ、誤解を生む恐れが大きいのは「国内製造」という表記だ。

 

「小麦粉が主原料である食パンやうどんの例でいうと、現状、特に『国内小麦使用』と謳っていない商品は、ほとんどが豪州産やアメリカ産小麦を使用しています。ただし、日本で製粉した場合、『国内製造』という表記が許され、小麦の原産地表示義務はありません」

 

このように、新しい原産地表示では、“国産”や“国内”の文字があっても、真に受けていられないのだ。それにしても、なぜこれほどわかりにくい表示に?

 

「それは、この制度の成立過程に要因があります」

 

ここ数年、交渉が進められてきたTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)。その狙いは、太平洋を囲む各国の関税をできるだけ取り払い、輸出入をしやすくすることにある。昨年誕生したトランプ政権はTPPへの参加を棚上げしたが、日本は、アメリカ抜きでの協定発効を目指して各国と交渉を続けている。海外から安価な食品が入ってくれば、当然、国内の生産者は圧迫されることになる。

 

「TPP対策の議論が活発だった’16年当時、国内生産者から要望が強かったのが『全加工食品の原産地表示』です」

 

自民党はTPPを推進する見返りに、この制度の実現を強力に推進。いっぽう、加工食品のメーカー側からは「ラベル印字やデータ管理のコストが増す」などと強い抵抗があった。このため、新制度の実現に向け、先のような“例外表示”を認めざるをえなかったというのが実情なのだ。

 

「場合によっては今後、TPPは頓挫するかもしれません。すると、その見返りだった『原産地表示』だけが実現するのですから皮肉なものです。新しい原産地表示については、’22年までの猶予期間はあるものの、消費者庁は、なるべく速やかに実施するよう促しています。大手メーカーを中心に、意外と早い時期に新表示へ切り替わるのではないかと思います」

 

問題は、実施されてみると例外表示のオンパレードにならないかという点だが……。

 

「メーカー側も、さすがに『国産または輸入』では、消費者をバカにしていると批判される恐れがある。できるだけ国名を明記する表示が主流になるのではないでしょうか。逆に、小さなメーカーでも、きちんと国名を表示してあれば、仕入れ管理がしっかりしていることがわかります」

 

いずれにせよ、全加工食品の原産地表示制度ができたことは、消費者にとって大きな一歩、と垣田さんは言う。紛らわしい表記にはだまされないよう注意しよう。

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