「この4月から、生命保険などの保険料の基準となる『標準生命表』が11年ぶりに改定されます。標準生命とは、1年間に亡くなる人の割合を性別や年齢別に予測して『標準死亡率(以下・死亡率)』を定めるものです」
そう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。たとえば、女性が50歳で亡くなる割合は、’07年には1,000人中2.16人だったが、今回は1.97人になった。寿命がさらに延びたことで、死亡率も下がったのだ。生命保険は、この死亡率を基に保険料を決めている。
「死亡率が低下すれば、保険期間に亡くなる人が減り、保険会社が払う死亡保険金は減ります。このため、たとえば10年定期の保険料は5〜10%下がると予想されています。実際、日本生命は保険料を最大2割、引き下げる方針です」
ただ今回の改定は、新規加入か、契約更新の人が対象。本誌読者世代で、影響を受ける人は少ないと思われる。そこで、本誌読者世代のライフイベントである“子どもが社会人になる”タイミングで、比較的簡単に保険を見直す方法を荻原さんが教えてくれた。
【1】生命保険は定期保険を解約
「現役会社員の夫が亡くなった場合、残された妻には遺族厚生年金が支給されます。支給額は、夫が受け取るはずの厚生年金の4分の3相当です。また、住宅ローンも保険で完済されます。妻が多少働けば、生活は問題ないでしょう。しかし、これだけでは足りないのが教育費です。そのための生命保険ですが、子どもが就職したら教育費はもう要りません。すなわち、大きな保障も不要になります。そこで、『定期保険付き終身保険』の定期保険だけを解約しましょう。これで、月々の保険料がぐっと安くなります。残した終身保険は、死亡保険金が300〜500万円だと思います。葬式費用などには十分な金額ではないでしょうか」
【2】医療保険は入院日額を再考
「老齢になるほど病気がちになるので、大きな医療保険が必要ではと考える方がいます。しかし、国の高額療養費制度も、老齢になるほど負担が減る設計になっています。高額療養費制度は、年齢や収入などによって、月々の医療費の負担上限が決められており、それを超えて支払った医療費は、申請すれば払い戻しが受けられます。負担上限は、70歳未満の一般的な収入の方なら、月約9万円です。ところが、定年退職し、収入がなくなって住民税が非課税になると、上限は月3万5,400円に引き下げられます。さらに、70歳以上になると、一般的な年金額の方なら、入院も含む負担上限は月2万4,600円。通院だけなら、月8,000円までの負担です」
こうした国の制度を利用する前提で、「入院日額を見直しましょう」と荻原さん。
「高齢になるほど大きな額は要らないと思います。保険は一度見直すと、節約効果が長く続きます。大きすぎる保障は外し、老後のための貯蓄に回しましょう」