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「大きな錠剤やカプセル、苦い薬も、服薬ゼリーで包むと、子どもも、お年寄りでもすっと喉を通って、無理なく飲めるんです」

 

製薬メーカー「龍角散」が販売する服薬補助ゼリーの1つ「おくすり飲めたね」。’08年、同社女性初の執行役員となった福居篤子さん(53)が、そのアイデアから開発、販売まで関わった大ヒット商品である。

 

最近では老人ホームなどでも、服薬補助ゼリーはよく使われる。ゼリーのおかげで、粉薬が気管に入ってむせることも、薬を吐き出すこともなくなって、服薬の時間がスムーズになった。

 

「龍角散に勤める前、私は臨床薬剤師として、病院の薬局に勤務していました。そのとき多くの患者さんが薬を飲むのに苦労していること、病気を治すための薬というものが理解できない子どもにとってはただ嫌な行為であるということを痛感したんです。どうして飲みにくい薬を作るのか理解できず、全ての人にとって苦痛になっている課題を解決した新しい薬を作りたいと考えました。だから、臨床の世界から製剤の世界に移ったんです」(福居さん)

 

龍角散の粉末をベースに、飲みやすさを重視した製品が「龍角散ダイレクト」だ。ノンシュガー、水なしで飲めるという龍角散のよいところはそのままに、個包装のスティックに入ったミントやピーチ味の顆粒など、女性でも携帯しやすいこの製品を開発したのも福居さんだ。

 

一時は倒産の危機にあった同社も、ここ数年の売上高は170億円規模。この5年で、売り上げは4倍に増え、躍進を続けている。

 

「あ、これいいかも。ちょっとなめてみて」

 

「うん、いいですね」

 

スタッフ2人に囲まれ、白衣姿の福居さんは、服薬ゼリーの新しい味の実験をしていた。部屋にはほんのりキャラメルの香りが漂っている。

 

現在の福居さんの名刺には、開発本部長、国際部長、マーケティング部長など、さまざまな肩書がズラリと並んでいるが、地道な実験も変わらずに続けている。

 

「実験・研究をする時間は、自分だけの世界に没頭できて、リフレッシュするんです」(福居さん・以下同)

 

入社当時から変わらず、製品開発をするときは、消費者目線を忘れないように心がけている。

 

最近では、沖縄産のシークワーサー果汁を配合したのど飴や、入手困難なフィンランド産蜂蜜を使ったハニーレモンジンジャー味ののど飴を発売したばかりだ。

 

多忙な福居さんのスケジュールは、パソコン上で管理され、社員で共有。そのわずかな空き時間は、社員全員で取り合いになる。

 

「15分ほどの空き時間を見つけて席に戻ると、5~6人がわれ先にと話しかけてきます。時間がないから、皆、1~2分で上手にプレゼンしていきますよ。実力のある社員が育って、ようやく花開いたという感じですね」

 

龍角散初の女性役員に就任してからは、女性の働く環境整備にも取り組んだ。倒産危機を乗り越え、風通しがよくなった龍角散は、若い社員の活気にあふれ、成長を続けている。