11年3月11日の東日本大震災、それに続く福島第一原発事故から4年、福島県沖での“放射能汚染”はどうなっているのか。2月下旬、本誌記者が訪れた福島県いわき市の小名浜港からのぞむ海は、汚染問題を感じさせないほど美しく輝いていた。一見、復興も順調に進んでいるように見えたが、巨大な魚市場に集まっていたのは、地元漁師や漁業協同組合(漁協)の職員をあわせても7~8人ほど。以前は水揚げされたヒラメやタコのセリが活発に行われていたが……。この日、タコを1匹だけ持ち込んだという漁師は言う。

 

「震災から4年たったけど、ちゃんとした漁なんてできないよ。私がやっているのはタコ籠漁。タコをエサで誘って、籠で獲るわけ。震災前はウチの船だけで300籠も仕掛けていたけど、いまは“試験操業”だからね。数も決まっていて、たった30籠だけだよ」

 

試験操業とは、小規模な漁と販売を行い、“福島の魚”が仲買業者や消費者に受け入れられるかを調査することなどを目的としている。現在、福島県の海は福島第一原発から半径20キロは操業禁止区域になっており、そのほかの海も試験操業だけが許されている状態だ。

 

「タコ籠をたくさん仕掛けたとしても、もし“出荷制限の魚”がかかれば、結局廃棄しなきゃならないしね。廃棄っていっても海に捨てるわけにもいかないし、廃棄費用もかかるんだよ。いまも(原発から)汚染水が出ているからね。ふつうに漁ができるようになるのは、いつのことになるのやら……」(前出の漁師)

 

“汚染水”という言葉を発したとき、漁師の顔がよりいっそう厳しくなった。福島第一原発の取材を続けているフリージャーナリストの村上和巳さんは言う。

 

「原子炉に注入されている冷却水や、原発周辺を流れる地下水など、いまも大量の汚染水が毎日、海に流れ込んでいます。そのため1日に300億ベクレルの放射性物質が海を汚染し続けているのです。その量は1年で実に10兆9千億ベクレルにものぼります。汚染水が流れ込み続ける限り、周辺海域に住む魚介も汚染され続けることになるのです」

 

今年1月6日に福島第一原発港湾内で採取されたタケノコメバルからは、なんと基準値の440倍、1キロあたり4万4千ベクレルが検出された。原発事故から、すでに4年。福島の生産者に光がさすのはいつのことに――。

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