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先月末、東京都がショッキングな発表を行なった。旧耐震基準で建てられたビルなどを調査したところ、震度6強以上の地震で、倒壊の危険性が『高い』建物は18%、危険性が『ある』建物は11%。合わせて29%に当たる251棟が、大地震で倒壊の恐れがあると判明したというのだ。

 

旧耐震基準は、’81年5月31日以前の基準で、地震への耐久性が低く、耐震補強などが急がれているもの。東京以外でも、同様の調査が行われている。大地震で倒壊の恐れがある建物は、大阪市に21%、名古屋市に15%、横浜市にも7%ある。

 

東京などの大都市から開発が進んだため、旧耐震基準の大型ビルは都心部に集中している。とはいえ、地方には古くからの家屋も多く、安心とはいえない。日本中、地震の危険とは隣り合わせなのだ。そこで、地震への経済的な備えである「地震保険」に関心が集まっているかといえば……。

 

「地震に備えておきたい方は多いと思いますが、加入率は約3割です(’16年度・日本損害保険協会)。あまり広まっていかないのは、保険料が原因といわれています」

 

こう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。地震保険の保険料は、住まいの地域と建物の構造で決まる。保険料がもっとも高い東京、千葉、神奈川、静岡にある木造住宅だと、補償額1,000万円あたり、年3万6,300円かかる。これは地震保険部分だけだ。

 

「地震保険は、単独では契約できません。火災保険に特約として付帯しますが、契約途中からでも追加できます。火災保険自体は損保会社によりさまざまですが、地震保険部分は全国統一。どの保険会社で契約しても、補償内容も保険料も同じです」

 

いっぽう、掛金が安いといわれる「共済」にも、地震による損害をカバーするものがある。だが、こちらは政府管掌(民間の損害保険会社が保険金を支払えないほど被害が巨額になった場合、政府が支払いを行う)ではないため、国の保証はない。

 

「私は常々、『生命保険などは同じ保障なら保険料の安いものを選ぶ』ことをお勧めしています。ですが、地震保険には、保険料以上に大切なことがあると思っています。大地震は同時に多数の被害者が発生します。莫大な保険金が一時期に集中して請求されるため、資金力が問題です。資金が不足すれば、『1,000万円の補償のはずが100万円しか受け取れない』という事態が起こりかねません」

 

だからこそ地震保険は、「政府の後ろ盾が重要」だと荻原さんは言う。

 

「政府の資金にも限界はありますが、東日本大震災でも滞りなく保険金は支払われました。地震保険は政府管掌のない共済よりも、民間の損害保険に付帯する地震保険のほうが安心だと思います。ただ、農業協同組合(以下、JA)が販売するJA共済なら、組織が大きく、加入者が大きな被害が発生しそうな都市部に多くないので、大地震でもある程度まで対応できるかもしれません。よく検討してください」

 

また、地震保険には、さまざまな割引制度がある。

 

「まずは長期契約割引です。最長の5年契約にすると、保険料は4.45年分ですみます。次に、耐震診断の等級による割引もあります。免震建築なら、保険料は半額です。割引制度をうまく利用して、加入したら長く続けましょう。やめた後で被災すると、悔やんでも悔やみきれません」

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