来年4月の消費税率アップを控え、自民党では消費税還元セールの禁止を含む特別措置法案を今国会に提出することを決めた。この法案は、スーパーやコンビニエンスストアなどの大手小売店が、商品を納める業者に対し、消費税の転嫁、つまり、仕入れた商品代金への上乗せを認めない事態を避けるために考えられたものだ。

 

経済ジャーナリストの荻原博子さんは、確かにこういった問題は以前からあった、としながらもこう言う。

 

「だからといって、消費税還元セールを禁止するだけで、この問題が解決するとは思えません。この法案は大手小売店が『消費税還元』と銘打ったセールを禁止するもので、名目さえ変えればセールはできます。それに、そもそも国が、セールをやっていいとかいけないとか言うこと自体がおかしいと思います」

 

日本には膨大な数の店や商品がある。それをすべて監視し、還元セールを摘発できるなら意味もあるだろうが、見せしめ程度に何社かを罰して終わりでは、さまざまな方法で、より悪質な納入業者イジメが起きる可能性もあるという。

 

日本は自由主義国家だ。以前は定価があり一物一価だったが、今ではメーカー希望小売価格となり、事業者が自分で値段を決める自由が認められている。同じメーカーの同じ缶ジュースでも、駅の売店と旅館、ディスカウントストアでは値段が違うのが当たり前だ。

 

「そんな自由な商取引を、この特措法で政府が束縛し後退させていいのでしょうか。場当たり的な法律を作るよりも、消費税を正しく徴収し中間業者の不公平感をなくすシステムを作らないと意味がありません。正確で、ごまかしのきかない税の徴収ルールを導入することが必要です」(荻原さん)

 

経済ジャーナリスト
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