来年から始まる少額投資非課税制度(NISA)。今月1日から始まった口座開設手続きには、初日だけで358万件の申請があったと報じられた。NISAは非課税で少額投資もOKなど、そのメリットについては何度も耳にするが、経済ジャーナリストの荻原博子さんは次のように指摘する。

 

「反面、デメリットや落とし穴については、ほとんど語られません。その落とし穴を指摘し、警鐘を鳴らしたいと思います。NISAの最も大きなデメリットは、投資で損失が出た際、NISA以外の投資なら払わなくていい税金を、NISAであるために払わなければならない。そんなケースがあるということです」

 

NISAの非課税期間は5年。5年たてば必ず、売却する、一般の投資口座に移す、別のNISA口座に移す、のどれかを選ぶことになる。

 

「売却する場合、利益が出ていればメリットは大きいです。ですが損失が出ていても、一般の口座と損失通算、つまり利益と損失の合算ができません。NISA以外の口座であれば、利益と損失の合算ができるのでその分税金が減ります」

 

一般の口座に移す場合、値下がりした投資は売却せず、そのまま所有する、いわゆる塩漬けを選ぶ人が多いとされるが、その場合の注意点は……。

 

「一般口座に移したときの価格が基準になります。たとえば、100万円で始めたNISA投資が5年後50万円に値下がりしていたとする。一般口座に移すと、その時点の時価が取引価格となり、50万円で買った株ということになってしまいます。その後80万円に値上がりして売却すると、30万円が売却益とみなされ、税金を6万円払うことになります」

 

初めから一般口座で投資していれば、まだ20万円損をした状態なので税金はかからない。NISAで始めたがために、税金を含め損失は26万円に拡大することになるという。

 

「金融機関はあの手この手でキャンペーンを行っていますが、株式であれ、投資信託であれ、投資にはリスクが付きものです。NISAは保有期間が限られているので長期投資には向きません。CMやキャンペーンなど目先のお得感に躍らされることなく、冷静に判断しましょう。もしNISAに挑戦するなら、デメリットも把握したうえで、損失を出しても家計に影響しない余剰資金で行いましょう」

経済ジャーナリスト
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