「’14年の年末に行われた総選挙で、国民は再び安倍首相に衆院の3分の2の議席(参院で否決されても再び衆院で可決できる絶対多数。および憲法改正発議に必要な議席数)を与えてしまいました。’15年は、安倍晋三さんが暴走する1年になると言っていいでしょう」

 

こう懸念をあらわに語るのは、慶應義塾大学経済学部教授の金子勝さん。’14年12月14日に行われた衆院選で、公明党と合わせた与党が326議席を獲得。衆院定数の3分の2を維持したからだ。

 

それでは実際に’15年、この国はどう暴走する可能性があるのか?5月からの国会で待っているのが、集団的自衛権行使容認の法整備の審議だ。

 

「すでに閣議で行使容認は決まっていますが、関連法案を改正しないと実際に自衛隊は派遣できません。これらの法整備を夏までに済ませれば、いつでも海外派遣可能になるはずです。私がいちばん危惧しているのは、そのときの中東のイスラム国の状況です」(金子さん・以下同)

 

現在、米国はイラク国内のイスラム国に対して空爆を行っている。

 

「米国がイラクで地上戦を開始する可能性は高い。もし、集団的自衛権行使の法整備が秋口に完了し、ちょうどそのタイミングで米国がイラクでの地上戦を開始するとなれば、安倍首相の判断次第で、即時、自衛隊派遣ですよ。タイミングさえ合ってしまえば、年内に、イラクへ自衛隊が行くことも考えられます」

 

もうひとつ、5月には、自民党の憲法改正推進本部が新たな憲法草案をまとめると伝えられている。金子さんは「この中身が大問題」と話す。草案には徴兵制の施行も入っているというのだ。’14の衆院選圧勝を受けて、安倍首相は記者会見で憲法改正を視野に入れていることを明言した。

 

「安倍首相が今後、4年間続くであろう政権中に成し遂げたいのは、アメリカから押しつけられた現在の憲法を廃して、戦前の日本に戻るような憲法に改定することです。自民党の憲法改正草案の中には、徴兵制だけでなく、基本的人権の代わりに家族の助け合いとか、福祉は家族のきずなで賄うとか、戦前回帰の内容がたくさん盛り込まれている。これが安倍さんの望む日本像なんですよ」

 

現在、香港で起きている民主化のデモ。多くの日本人は対岸の火事と考えているが、いつ日本がそういう国になってもおかしくはないのだ。

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