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後を絶たないいじめ。問題があっても学校は隠そうとする。追い詰められた親子が頼りにする探偵会社が注目されている。いじめの証拠と“犯人”をあぶりだすそのテクニックとはーー。

 

「私立中学に通う息子がいじめに遭ってます。最初は仲間からは無視され、私物を取られたりしていたのが、その後暴力にまでエスカレート。学校側も気づいているのですが、解決しようとしない。どうしたらいいのでしょうか」

 

苦悩する親から、毎日このような相談を受けている探偵会社がある。

 

T.I.U.総合探偵社(東京)はこれまでに、全国から5,800件以上のいじめ相談を受け、聞き取り後、実際に調査を行った数は360件に上る。今では1日平均で1〜2件の相談がくるというから、まさに“いじめの駆け込み寺”のような探偵会社だ。探偵会社が行ういじめ調査とは、具体的に何をやるのか。

 

「今は個人情報保護法で、生徒の住所録が作られていないことが多い。被害者が相手の家を知っていればいいのですが、わからない場合は、あらゆる方法で住所を調べ上げる。そして被害者本人から詳しく聞き取りをして、まずはクラスや部活の中での相関図を作ります。その中からいじめの情報提供者になりやすい人物を選んでいきます」

 

そう語るのは、同探偵社の阿部泰尚代表(41)。相関図から調査に協力してくれそうな友達を何人か選び、被害者本人から協力を依頼してもらうのだ。了承が得られれば、阿部代表がその友達と直接、話をする。そしてより多くの情報をもらえるようにしていくそうだ。

 

相談にはこんな特殊なケースもある。’13年春〜’14年秋まで、当時、いじめに遭っていたという中学生の娘さんの父親、Bさんが振り返る。

 

「娘宛てに“学校へ来るな!”“殺すぞ!”と書かれた手紙が、突然家に届きました。多いときには週に2〜3回。最終的には60通ぐらい送られてきましたね。その脅迫状の内容には、娘が送るLINEのタイムラインの話に触れたりしていたので、当初は校内の生徒だろうと思っていました」

 

Bさんは、学校であまり大事になると娘が学校に行きづらくなる。早い段階から探偵に犯人を見つけてもらおうと、T.I.U.総合探偵社の阿部泰尚代表(41)に調査を依頼した。

 

「娘のタイムラインをグループ分けして、ブロック。そして手紙の内容を照会しながら最終的に5人に絞り込みました(Bさん)

 

しかし、探偵チームが数カ月マークしても犯人が特定できない。そこで手紙の消印、投函される時間を絞り込んで怪しいポストを張り込んだ。すると、5人の中の1人である同級生の母親が手紙を投函する姿をカメラで押さえたのだ。

 

「まさか母親だとは思いもしなかった。当時、娘が付き合っていた彼氏の元カノのお母さんでした。大人の犯行だったので、すぐに警察に届けました。1年以上にわたり、粘り強く調査を続けてくれたことに感謝しています」(Bさん)

 

じつは、いじめ調査は無償で行われている。阿部代表は、いじめ専門のNPO法人ユース・ガーディアンを立ち上げ、いじめ問題の解決に取り組んでいるのだ。そのため、いじめ調査で年間3,000万円の赤字が出る年も。

 

「うちの探偵会社には15人のスタッフがいますが、みんな『もうやめてくれ!』と言います(笑)。ただ、みんな文句を言いながらもやってくれています。通常の探偵業務は契約事なので、きっちりとやります。繁忙期もあるので、その場合は本業の調査を優先して、いじめの案件は僕が動く、そういう感じでやっています」(阿部代表)

 

まずは聞取り調査したうえで、「これは犯罪系のいじめなので調査すべき」判断したら、阿部代表は単独で動くこともあるという。だが、相談内容の9割ぐらいは、学校への対応の仕方やアドバイスをして終わるレベルだとか。

 

「いまもいじめの実態を隠蔽しようとする学校は、たくさんあります。学校がいじめに向き合い、僕らが調査をする必要がなくなるまでやり続けたいと思います」(阿部代表)

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