「寡婦(かふ)」という言葉を聞きなれない人も多いのでは。夫と離婚、または死別して、再婚していない女性をいう。こうした寡婦のうち一定条件を満たす方には、「寡婦控除」という税金を安くする仕組みがある。
だが、制度自体を知らない人が多く、なかには「会社に離婚したことを知られたくないから申告しない」という女性もいるという。「女性とシングルマザーのお金の専門家」として、女性からの相談実績が豊富な加藤葉子さんは、つぎのように話す。
「離婚して相談に来る方でも、寡婦控除を知っている方はほとんどいません」
でも、せっかく税金が安くなる制度があるのに利用しないのは、税金を払いすぎているということ。節税できるありがたい制度を、使わない手はないだろう。そこで、加藤さんが寡婦控除について教えてくれた。
寡婦控除には2種類、「寡婦控除」と「特別の寡婦控除」がある。寡婦控除は所得税を計算するときに、収入から27万円を控除、つまり差し引くことができる。住民税の計算では、収入から26万円が控除できる。また、特別の寡婦控除の場合は、所得税では35万円を、住民税では30万円を控除、収入から差し引くことができる。控除が増えると、その分所得が減り、納税額が安くなり節税につながるのだ。
【Q1】どうやって申告するの?
実は、寡婦控除の申告はとても簡単だ。お勤めの人は年末調整の際、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の寡婦や特別の寡婦の欄にチェックを入れるだけでOK。
また、自営業やフリーランスの人は、確定申告の際に記載する項目がある。
【Q2】昨年末の年末調整で申告していません。どうすればいい?
年末調整のチェックが漏れた人は、確定申告をしよう。
「今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、確定申告が4月16日まで延長されています。今から準備しても間に合いますよ」(加藤さん・以下同)
【Q3】納税額はどれぐらい安くなるの?
一例として、夫と離婚した45歳のAさん(16歳の子どもが1人)のケースを見ていこう。
Aさんの年収が200万円と、500万円の2パターンをシミュレートしてみると、年収200万円の場合、寡婦控除に関する申告をしなかったら、所得税が年約7,400円、住民税が年約2万4,800円かかる。
いっぽう、Aさんが特別の寡婦控除を申告して認められると、所得税、住民税ともにゼロになる。特別の寡婦控除が認められたおかげで、税金が年約3万2,200円安くなるのだ(所得控除等により変わることも)。
年収500万円の場合は、年約5万2,400円安くなった。
「申告するだけで、これほど納税額が減るのは、家計にとってとても助かる制度だと思います」
【Q4】税金が安くなった分はどうなるの?
’19年分として、寡婦控除か特別の寡婦控除が認められた場合、所得税は、お勤めの人は毎月天引きですでに納められているので、還付金として返金される。
住民税は、’20年6月以降に払うものが安くなる。
「6月からの手取りは、住民税は減った分、少し増えたように感じられるかもしれません」
「女性自身」2020年4月7日号 掲載