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「発表が遅すぎたのでは」と批判もされた五輪開催の延期。しかし、たとえ1年程度の延期でも、国民の生活に与える影響はかなり大きくなりそうだーー。

 

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、3月24日に国際オリンピック委員会(IOC)が、安倍晋三首相とバッハ同委員会会長との電話会談を受けて、「1年程度の延期」を承認した。

 

「124年の近代五輪の歴史上、戦争により3回は『中止』されましたが、『延期』は史上初。それは、1894年に世界大戦を回避するため『スポーツで世界平和を構築する』という精神が打ち出されて以来、オリンピアードという『4年に1度のサイクル』が遵守されてきたからです」(スポーツコンサルタントの春日良一さん)

 

延期によって経済にどのような影響を受けるのだろうか。経済評論家の加谷珪一さんが解説してくれた。

 

【1】延期コストはどれほどかかる?

 

都と大会組織委員会が’19年12月にまとめた予算計画によると、大会予算は1兆3,500億円。延期によって、さらに「追加費用」がのしかかる。

 

「1年よけいに働く組織委員会の人件費、会場施設の賃借費用、そして関係者の宿泊施設の予約費用などがかさむことになります。組織委員会は追加費用を『最大3,000億円程度』と試算しているようです」(加谷さん・以下同)

 

【2】その費用は誰が負担するの?

 

予算計画によると、大会予算1兆3,500億円は、組織委員会が6,030億円、都が5,970億円、国が1,500億円を負担することになっている。では、あらたな延期コストである3,000億円はどこが負担することになるのだろうか。

 

「今回は安倍首相が直接、バッハ会長と会談したわけですし、いまは“国難”でもある。もう東京都という一自治体の負担では賄えないでしょう。このお金は、政府が特別予算で対応すべきお金だと考えています。しかし、この3,000億円とは、あくまで前述したような“直接的な費用”だけ。その先には、もっと“巨額の負担”が待ち受けているのです」

 

【3】私たちの家計にどう響くの?

 

「東京五輪開催による、レガシー効果(=長期的な経済的恩恵)は、約27兆円と試算されています。しかし、今年の夏に五輪が開催されることを前提に、選手をプロモーションに起用するような新製品の開発を行っていた食品やスポーツ用品業界は、いったんそのプロジェクトを白紙にせざるをえない場合も出てくる。来年開催とはいっても、プロジェクトを中止・縮小する企業は現れるでしょう」

 

そのような企業の損失も含め、延期による機会損失は約2.7兆円と加谷さんは試算する。もしもこのまま新型コロナウイルスによる経済的な打撃が深刻化し、さらにこれほどの経済損失となると、長期的に景気を押し下げていくことになる。

 

「当面は赤字国債の発行でカバーすることになるので、すぐに税金という形で国民の負担にはなりませんが、ここで赤字国債の大増発になると、政府の財政再建目標はより達成が遠のいてしまいます。金利が上昇し、賃金は上がらないまま物価が上がることで、家計を圧迫する可能性もあります」

 

3,000億円の大会延期コストは、五輪後の日本を“インフレ地獄”へと突き落とす“負のレガシー”になるかもしれないのだ。

 

「女性自身」2020年4月14日号 掲載

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