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「新型コロナウイルスの影響で日本のハイパーインフレの危機はさらに増したと言えるでしょう。ハイパーインフレになれば円の価値が暴落し、みなさんの貯金は紙クズになってしまいます」

 

そう語るのは、経済評論家の藤巻健史氏。モルガン銀行東京支店の元支店長で、参議院議員を務めた経験も持つ(以下、「」内は藤巻氏)。いったいなぜ、ハイパーインフレの可能性が高まっているのか――。

 

「私がいま一番恐れていることは日本銀行の崩壊なんです。崩壊と聞くとみなさんビックリされるでしょうし『日銀が潰れるわけない』と思われるかもしれませんが、実は中央銀行が潰れることはあります。日本銀行法にも解散の規定があるぐらいで、本質的に解散を想定しているんです。実際に、第二次世界大戦後のドイツは通貨の価値が下落し、中央銀行を潰して新たな中央銀行を作り、ドイツマルクという新しい通貨を作ったという例があります」

 

日銀はいま、世界的に見ても異例の金融政策を行っているのだという。

 

「日銀は異次元の量的緩和をするため、まず株を買い始めました。金融政策のために株を買っている中央銀行は、世界中どこにもありません。今回のコロナ禍でアメリカの中央銀行であるFRBもいろいろと大胆なことをやりましたが、いまだに株の購入はやっていません。株を買ってその値段が下がれば、債務超過になってしまいます。だから各国の中央銀行は株には手を出さなかったわけです。ところが日銀は、今年中には日本一の株主になってしまうほど株を買い続けています」

 

こうした日銀の金融政策は、どのような事態を招く可能性があるのか。

 

「いまの日銀は金利が少しでもあがると途端に債務超過に陥ってしまうギリギリのところです。金利があがるのを抑えるために株や国債を買いあさっているわけですが、これはまさに薄氷の上を歩いている状態です」

 

安倍首相が4月7日に打ち出した総額108兆円の緊急経済対策で、39兆円の財政出動が必要となっていた。さらに1人あたり10万円の一律給付が決まり、財政支出は48兆円を超えることに。新型コロナへの莫大な財政出動・経済対策で、日本のハイパーインフレ危機はさらに近づいたのだと藤巻氏は語る。

 

「コロナウイルスへの影響で世界中の国々が積極的に財政出動しているので、赤字国債を発行することになるでしょう。そうなれば、やはり金利が上がってしまいます。赤字国債を中央銀行が買うことによって、いつまで金利の上昇を抑えきれるかが問題となるわけです。しかし、日本の場合は日銀がこれまでにも国債を”爆買い”してきたため、各国の中央銀行に比べて日本の債務超過は目前。債務超過により円の価値が暴落し、ハイパーインフレがやってくる……というシナリオは十分ありえます。新型コロナウイルスの影響で日本のハイパーインフレの危機はさらに近づいたと言えます」

 

藤巻氏は家計の防衛策として「預金をドルに替える」「住宅ローンを固定金利に変える」という2つの方法を提案する。

 

「ハイパーインフレが起きれば円は大暴落します。そうすると、ドルが手に入らなくなってしまうので、原油は買えないし、農産物は買えないし、マスクだって買えなくなるわけです。そんな円の大暴落へのリスク回避として、世界の基軸通貨であるドルを持っておくことは大事です。また、住宅ローンについては固定金利に変えてしまったほうがいいと思います。いますぐに変動金利から切り替えると、固定の方が金利は高いので少し損をすることになりますが、いずれやってくるハイパーインフレ時代への保険だとして割り切ってもいいのではないかなと思います」

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