新型コロナウイルス感染拡大の余波が長引くなか、休業やリストラで収入が減り、生活がピンチに陥る家庭が急増している。
「家賃や光熱費の支払い猶予がないとき、焦って消費者金融やクレジットカードのキャッシングでお金を工面しようとする人もいますが、返済の利率がとても高くつくためそれは避けましょう。想定外の事態が起きている今だからこそ、国や自治体が整備している頼みの綱、すなわち“セーフティネット”の活用を検討すべきです。すでに全国の自治体で申し込みを受け付けていて、要件のハードルも下がっているので、生活に困ったことがあったら自治体に電話をかけて相談してみましょう」
そうアドバイスするのは、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さん。国民1人あたり10万円が支給される「特別定額給付金」の支給がスタートしたが、大半の人はまだ受け取れておらず、さまざまな支払い期限を前に困っている人も多い。そこで、コロナ禍でのリストラや収入減のピンチに陥った際、給付の対象となりうる制度を井戸さんに解説してもらった。急激な収入減のピンチにもらえるお金は次のとおり。
【会社をリストラされてしまった】
制度名:失業給付
給付額・条件など:基本手当日額(賃金日額×約50〜80%)×所定給付日数。会社を辞める前の1年間に雇用保険の加入期間が通算6カ月以上あり、働く意思があること。受給資格決定日から1カ月後に失業給付金が振り込まれる
申請先:ハローワーク
【倒産した会社から賃金が振り込まれない】
制度名:未払賃金立替払制度
給付額・条件など:未払い賃金×80%(上限額あり)。倒産の半年前〜倒産後1年半の間に退職して、2万円以上の未払い賃金がある人
申請先:労働基準監督署、独立行政法人労働者健康安全機構
【業務外の病気やケガで仕事を休んでしまった(※どちらか一方のみ受給できる】
制度名:傷病手当金(健康保険)
給付額・条件など:標準報酬日額×3分の2×最長1年6カ月。業務外の病気やケガで休み、事業主から十分な報酬をえられないとき、連続して3日間待機の後、4日以降休んだ日に対して給付される
申請先:加入している健保組合、協会けんぽ窓口
制度名:休業補償給付(労災保険)
給付額・条件など:給付基礎日額×80%×休業日数。勤務中、通勤途中の事故などの療養で、休んだ日に対して給付される
申請先:労働基準監督署
【家賃の支払いが厳しくなった】
制度名:住居確保給付金
給付額・条件など:家賃相当額(自治体によって異なる)×最長9カ月。65歳未満かつ離職から2年以内、世帯収入と資産が一定以下などの条件を満たすと給付される
申請先:市区町村の福祉担当窓口、社会福祉協議会
【生活が苦しい】
制度名:求職者支援制度(職業訓練受講給付金)
給付額・条件など:月額10万円。雇用保険未加入の人もハローワークの指示で職業訓練を受けることができ、その場合、世帯収入が25万円以下などの条件を満たすと支給される
申請先:ハローワーク
制度名:緊急小口資金
給付額・条件など:最大20万円の貸付(返済期限は2年以内)。収入が減少して生計が維持できないとき、無利子・保証人なしで借りられる。貸し付けは1回のみ
申請先:市区町村の社会福祉協議会
制度名:総合支援資金
給付額・条件など:最大60万円の貸付(返済期限は10年以内)。収入が減少して生計が維持できないといき、無利子・保証人なしで借りられる。単身世帯月15万円、2人以上世帯月20万円以内で貸し付け期間は原則3カ月以内
申請先:市区町村の社会福祉協議会
まずは医療費から見て行こう。
「新型コロナウイルス感染症は『指定感染症』のため、医療費は公費負担となり、自己負担はありません。病院でのPCR検査代、入院費、その後民間の宿泊施設に移った際の滞在費・食事代も自己負担はゼロです。コロナに感染して会社を4日以上休み、給与が支払われない場合は、4日目以降に健康保険から『傷病手当金』がもらえます。非正規社員でも健康保険に加入していれば支給の対象となります」(井戸さん・以下同)
帝国データバンクの発表によると、新型コロナ関連の倒産件数は5月14日時点で148件。日を追うごとにますます増えている。もしも勤め先の会社が倒産して職を失ってしまったら、ハローワークで「失業給付」を受給しよう。
「パートやアルバイトでも週20時間以上働いている人は雇用保険に加入しているので、失業給付の対象になります。リストラなどで失業した人は、ハローワークで手続きをします。受給資格決定日から1カ月後に、失業給付(基本手当)が銀行口座に振り込まれます」
会社が倒産する時点の半年前から1年半後に退職した人で、2万円以上の未払い賃金があれば「未払賃金立替払制度」で取り戻すことができる。こちらもパートやアルバイトでも適用されるので、確認してみよう。
休業による収入減で家賃の支払いが厳しい、という人には、生活困窮者自立支援制度の「居住確保給付金」がある。雇用形態は問われず、世帯収入、預貯金額で支給の可否が決まる制度だが、このたびハローワークに登録して求職活動をしていなくても給付金が受け取れるように支給要件が変更された。支給額は自治体ごとに異なり、東京23区では単身世帯が5万3,700円、2人世帯6万4,000円。支給される期間は3カ月だが、最長9カ月まで延長できる。
ハローワークでは、職業訓練を受けながら、月額10万円の支援を受けられる「求職者支援制度」がある。受け取れる期間は受講するコースによって異なり、雇用保険に未加入のフリーランスの人でも利用できる制度だ。
「また、市区町村の社会福祉協議会では無利子、保証人なしで1世帯20万円まで借りられる『緊急小口資金』が利用でき、窓口に出向かなくても申請書をホームページからダウンロードして郵送するだけで受け付けてくれます。そこでも足りない場合は『総合支援資金』で融資を受けられ、4カ月分しのぐことができます」
未曽有の危機だからこそ、自分には関係ないと思っていた制度に頼れるケースも出てくる。上手に活用して、ピンチを乗り切ろう。
「女性自身」2020年6月2日号 掲載