公表されたデータによると、産後1年未満の自殺者92例の年齢では、35歳以上が多かったという。

 

「データも少ない母集団なので、強いて言うならば、20代に比べれば体力的につらくなりやすいのかもしれません。ただ逆に、若い人よりも年齢を重ねた方の方が、経験が積み重なっている分上手く育児をできる面があるかもしれません。ですが、うつ状態になると脳機能が一時的に低下するので、そうした対処もむずかしいです」

 

高齢出産の場合、産後の回復も遅れがちだ。心身ともに負担を感じる母親も多いのだろうか─―。そして今、産後の女性に決して無視できないのがコロナ禍という特殊な状況だという。

 

「コロナ禍というのは、お母さんたちのストレスにも影響を及ぼしていると思います。 『子どもがコロナにかかるのが心配で外出するのが怖い』という方は、当院の外来でもいます。引きこもりに近い状態になっている方にもお会いします。子どもを守らないといけないという気持ちから、不安を抱えるのも無理はないと思います」

出産後の自殺者をこれ以上、増やさないためにはどうすれば……。

 

「強調したいのは“産後うつ=自殺”ではないということです。産後うつになる人はとても多いですが、自殺に至ってしまうのはその一部の方です。また、産後の時期に自殺するのは他の要因による場合もあります。産後うつだと感じたら、つらい気持ちを一人で抱え込まずに誰かに話を聞いてもらうことも大切です。

 

つらい気持ちをパートナーや家族など、周りの信頼できる人に話す。そうした相手がいなければ、地域の保健センターなど相談機関で話す。また、できる限り負担を減らして、心身ともにしっかりと休むことが大事です」

 

産後の母親のケアはもはや社会問題なのだ─―。

 

■「日本いのちの電話」

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「女性自身」2020年10月20日号 掲載

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