そもそも、両組織の目的はまったく異なる。いま注目を集めている日本学術会議は「わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的」(日本学術会議法 第二条)とした組織。科学的な知見に基づいた政府への提言などを主な役割としていて、会員も40~60代の研究者が中心で、70歳が定年となっている。

 

一方、日本学士院は「学術上功績顕著な科学者を優遇するための機関とし、この法律の定めるところにより、学術の発達に寄与するため必要な事業を行うことを目的」としている。会員も、複数のノーベル賞受賞者を含む、国内外のさまざま学術賞を受賞したことのあるような重鎮によって構成されている。年齢層も60代後半から90代が多く、最年少はノーベル生理学・医学賞受賞者でもある山中伸弥所長(58、京都大学iPS細胞研究所)。彼らのような“学術上功績顕著な科学者を優遇”するための組織であるため、年金も支給されることになっているのだ。

 

もちろん、日本学術会議は日本を代表する研究者で構成されているので、会員を退任したあと、日本学士院会員となる例はある。また、今年度から日本学術会議の会長を務める、ノーベル物理学賞受賞者の梶田隆章所長(61、東京大学宇宙線研究所)のように、両組織の会員を兼ねるという例もないわけではない。だが、会員数や任期の関係もあり、平井氏のいうように「ここ(日本学術会議)で働いたら、その後、学士院というところにいって」ということはあり得ないことなのだ。

 

ツイッター上では平井氏のこの誤った情報によって、日本学術会議に対する憎悪が高まっている。平井氏の発言の映像とともに、こんなツイートが……。

 

《税金にたかっている》
《そりゃあ250万円の年金が 今の年金にプラスされるのなら 激怒してデモを起こすわな》

 

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