会見を行った「原発事故避難者『2倍請求』撤回訴訟を支援する会」の瀬戸大作さん(左)と熊本美彌子さん(右) 画像を見る

福島第一原発事故から、間もなく10年。“復興”の影に深い闇が見えてきた。

 

現在も首都圏の国家公務員宿舎に避難を続けている区域外避難者34世帯に対し、コロナ禍で2度目の緊急事態宣言も出される寒空のもと、福島県が追い出しをかけているというのだ。

 

「経済的な事情で転居できない避難者を、まるで犯罪者のように福島県は扱っています。使用料(家賃+駐車場代)を通常の2倍請求し続けたあげく、福島県に住む老親の元に押しかけたり、書留で文書を送りつけたりして、あなたの娘(息子)さんは『○百万円の家賃を滞納している。支払って1月中に退去するよう親から言ってくれ。さもないと法的手段に訴える』などと、脅しのようなことをしているんです。これが被災者に対して、することでしょうか?」

 

そう訴えるのは、原発事故避難者「2倍請求」撤回訴訟を支援する会(以下、支援する会)の瀬戸大作さん。

 

暮れも押し迫った12月25日、支援する会は記者会見を開き、福島県に対してそう憤った。

 

なぜ、こうした事態になっているのか――。

 

「10年前の福島第一原発事故のあと、災害救助法に基づき、被害者に対して公営住宅を無償提供してきました。ところが福島県は、2017年3月に国の避難指示区域外から避難している“区域外避難者”の住宅支援を打ち切ったのです」

 

こう説明するのは、支援する会のメンバーで、自身も福島県から東京に避難中の熊本美彌子さん。

 

この住宅支援の打ち切りが問題の発端だった。

 

区域外避難者には、東電からの賠償金はほとんど出ていない。避難で仕事を変えることを余儀なくされ、派遣やパートの仕事しか見つからず収入が大幅にダウン。妻や子どもだけ避難している母子世帯もいる。こうした事情から、経済的に困窮している人たちも少なくない。そこにコロナ禍による収入減が追い打ちをかけている。

 

「福島県は、〈経済的な理由ですぐに退去できない世帯に関しては、国家公務員と同等の家賃を支払えば2019年3月まで住んでもよい〉という2年間の期限を設けました。しかし、2年過ぎても退去できない場合は“使用料を2倍”請求するというおかしな条項が契約書に入っていた。県は、事前にそれをきちんと説明もせず、しかも2017年4月になってから契約書を送ってきたのです」(熊本さん)

 

使用料を2倍請求されることを知らずに契約を結んだ避難者がほとんどだった。

 

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