国立競技場は五輪後世界記録が認定されなくなる(写真:共同通信) 画像を見る

当初から3倍に膨れ上がった東京五輪開催予算。予算が増えて笑顔になったのは、選手でも国民でもなさそうだ。これらの費用は税金で賄われていることを忘れてはならないーー。

 

「東京オリ・パラを招致した段階では7,300億円だった大会予算はいまや1兆6,444億円に。東京都や国の負担分を合わせると関連経費は3兆円になります。さらにPCR検査など、コロナ対策による追加費用も発生しています」

 

そう話すのは、『オリンピック・マネー』(文春新書)の著者でジャーナリストの後藤逸郎氏。後藤氏は、東京五輪では明らかに無駄な費用が発生していると指摘する。

 

コロナに関する追加費用はわかるにしても、それ以前の大会費用はなぜ増えたのだろうか?

 

『ブラックボランティア』(角川新書)の著書があるノンフィクション作家の本間龍氏がこう語る。

 

「当初91億円だったオリ・パラ開閉会式の総予算は、’19年に130億円に増大。さらにコロナ禍の延期を受けて165億円に膨らみました。大会組織委員会には、どのような予算配分で、どう演出するのかをチェックする能力が欠如。開閉会式を取り仕切る電通にいわれるがまま、お金を出してきたのです」

 

そこで本誌では、今回の五輪での気になる「無駄遣い」の“お値段”を調査した。その費用は次のとおり。

 

【国立競技場】1,569億円

「国際陸上競技連盟は、公式大会を開催できる競技場の条件として、試合前に選手が準備運動や試走ができるサブトラックの併設をあげています。国立競技場のサブトラックは大会後に撤去予定。つまり、五輪後は、国立競技場で世界記録が出ても公式に認められないのです」(後藤氏)

 

【開閉会式】165億円

「東京らしさ、日本らしさ」を表現したいと、招致段階の91億円から’19年に130億円へアップ。延期に伴い、簡素化・コスト削減実施も165億円まで増加。「大会組織委員会は制作委託事業者で広告大手の電通に丸投げ。“もっと、もっと”と言われるがまま」(本間氏)。大会組織委員会に165億円の内訳を聞いてみたが「公表していません」とのこと。

 

競泳会場は年6億の赤字製造機 五輪関係者のマヒした金銭感覚
画像を見る 年間6億円の赤字が見込まれる東京アクアティクスセンター(写真:共同通信)

 

【東京アクアティクスセンター】567億円

競泳や飛び込み、アーティスティックスイミングなどで使われているが無観客に。1万5,000席の観客席はガラガラで567億円の建設費がむなしい。ロンドン五輪のロンドン・アクアティクス・センターの整備費は331億円だった。大会後は年間100万人の来場者を想定しているが、年間6億3,800万円の赤字を見込んでいる。

 

【チケット販売システム等】39億2,561万5,334円

これほどの費用がかかったにもかかわらず、ほとんどの会場は無観客となりチケットも販売されていない。業務を受注したぴあに聞いてみると「落札時から受託業務内容が大幅に変わっておりますが(1年延期、再抽選、払い戻しなど)、当社からその詳しい変更内容をお話しすることはできません」との回答を得た。

 

ほとんどの会場が無観客となって、900億円のチケット収入が大幅に減ったにもかかわらず、組織委員会の金銭感覚はマヒしたままだと本間氏が続ける。

 

「開会式では、関係者に用意された4,000食の弁当が廃棄されていたことが問題になりました。さらに、ほかの会場でも満員の観客が入っていることを前提に資材や飲食物を調達して、業者への支払いが発生しています。一般の感覚ならば、少しでもロスを減らそうとするハズなのですが」

 

今回の五輪をこのまま終わらせてはいけないと後藤氏。

 

「五輪でかかった費用について、今後、しっかりチェックしていくことが重要です。巨額に膨らんだ赤字を埋めるのは、組織委員会でもなければ東京都でも国でもありません。最終的には私たちが税金として支払うことになるのです」

 

熱戦ばかりでなく、五輪の舞台で行われている無駄遣いにも、しっかり目を向けていこう。

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