14時間経っても搬送先決まらない…医師語る東京の医療崩壊
画像を見る 自宅療養者に電話で病状を確認する都内の医師(写真:共同通信)

 

■元気なのに酸素飽和度が低下…“幸せな低酸素症”の恐ろしさ

 

新型コロナウイルスの場合、“呼吸器症状なし”“せきのみで呼吸困難なし”の状態であれば発熱が続こうとも軽症と診断される。呼吸困難、肺炎所見がある場合は中等症I、酸素投与が必要な場合は中等症II、ICU(集中治療室)に入室または人工呼吸器が必要な場合が重症だ。

 

ただ、軽症どころか、中等症でも入院が難しくなってきている現実がある。冒頭の“14時間かけても搬送先が決まらなかった患者”の場合もそうだ。田代院長によると、

 

「その方は30代後半の男性です。基礎疾患も特にない方でした。昨日の夜8時に症状が悪化し救急車を呼んだのですが、今朝10時になっても入院先が見つからなかった。僕が駆けつけて、在宅の酸素濃縮器を手配し、内服薬を処方しました。酸素飽和度は75%くらいだったと思います(96~99%が正常値とされている)」

 

この男性はその後、そのまま自宅療養を続けている。一人暮らしだというが、もしまた急変したとしたら――。

 

「そうですね。気づいてくれる方がいないので心配です」

 

田代院長によると、「元気そうに見える患者さんなのに酸素飽和度を測ると、とても低くてギョッとする」こともあるという。新型コロナウイルスに感染した場合、酸素飽和度が下がっても息苦しさを感じず、気づかないうちに重症化していることがあるのだ。

 

「“ハッピーハイポキシア(幸せな低酸素症)”と呼ばれる症状です。僕が見たなかにも、酸素飽和度が50~60%という患者さんがいて、非常に危険な状態ですが、会話はできていたんです。

 

その方は40代の男性で、もともと交通事故で片肺を半分切除していたこともあり、危険な状態でしたが、それでも入院先が決まらず、10日間以上自宅療養が続いていました。意識がもうろうとしていましたので、保健所に緊急入院が必要だと報告して、本当に強くプッシュして、やっと入院先が見つかりました」

 

東京では7月下旬以降、自宅療養中の容体急変による死者も相次いでいる。とにかく私たちにできることは、感染しないよう自分の身を守ることだ。誰にも命を諦めさせないために――。

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