■1人だけ出社強要は安全配慮義務違反の可能性
東京都では緊急事態宣言が出て“いない”のは、今年になってわずか2カ月ほど。もはや有名無実化している緊急事態宣言だが、これが出ているということは、条件(1)「感染拡大が進んでいる状況である」ことに国がお墨付きを与えていると判断していいか?
「緊急事態宣言は、感染拡大が進んでいることと医療提供体制のひっ迫が改善されていない状況を国が認めているわけで、当然、在宅勤務をしたい労働者としては、会社側に配慮を求める理由にはなります。とはいえ、(1)については、労使で捉え方が一致しないとトラブルの原因に。これは、会社や労働者の主観ではなく、客観的なデータ等に照らしてその時点の感染拡大状況を元に判断されます」
1年半以上にわたるコロナ禍のなか、佐々木先生のところにも「在宅勤務をしたいけど会社がさせてくれない」や「自分1人だけが出社を強要されている」といった相談が寄せられているという。そんな働く人の権利は守られているのだろうか。
「たとえば、労働者に在宅勤務をする権利があるかどうかというと、就業規則や労働契約のなかには『在宅勤務をする権利』はないのが一般的で、法律上の権利はありません。先にあげた(1)〜(4)の条件を満たしているかどうかを考慮して粘り強く交渉していくしかありません。会社側に『うちは、そんなことできません』と言われると、在宅勤務を実現するのはなかなか難しいでしょう。ただし、ほかの社員が在宅勤務をしているなか、1人だけなんの理由もないのに出社を命じられていた場合は、一部の社員を差別的に扱っており、明白なハラスメントです。仮に損害が生じたら、損害賠償請求も可能です」
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