■非正規も安全配慮義務で守られる
安全配慮義務を理由に在宅勤務を希望したとしても、会社側が「時差通勤を認めている」「オンライン会議など感染対策をしている」としている場合には、違反とはいえない可能性もあるという。感染対策においては、無頓着な人もいれば、神経質になっている人もいるように、受け止め方には個人差があり、違反しているかどうかの線引きを複雑にしている。
「そうしたトラブルを避けるためにも、労働者と会社はしっかり話し合い、労働者の健康と安全のためにとられる措置が適切なものになるよう、認識の一致を目指すべきなのです。会社に話し合いをもちかけても応じてくれなかったり、話し合っても認識が一致しない時は、労働組合に相談したり、労働局や労働基準監督署、または都道府県にある労働関係の問題を扱っている窓口に相談するといいでしょう」
声を出しづらく、労働組合などのサポートもない派遣社員など非正規のなかには、テレワークができずに、まわりの正社員が在宅勤務しているなか、感染に怯えながら働いているという話を耳にするが……。
「非正規であろうと労働者ですから、安全配慮義務で守られます。仮に違反があった場合には、しっかり会社側か派遣元に改善を要求することが重要です。ただし派遣社員の場合は、労働内容や勤務地をあらかじめ決めておく必要があります。派遣社員が在宅勤務を要望した場合、『勤務地が自宅ではない』ことを理由に会社側が拒否するケースも。そうなると勤務地に自宅を加える交渉をした上で、在宅勤務を求めていく必要があります。納得がいかない場合は、派遣社員でも入れるユニオンに入ればこうした会社や派遣元との『話し合い』をより確実に実施できます」
佐々木先生によると、コロナ禍で安全配慮義務違反が想定される具体的なケースは、以下の通りだ。
・在宅勤務が可能な業務で、在宅を希望したにもかかわらず、出社必須の業務命令が出た
・時差通勤をしても影響がない業務で、時差通勤を要望したが、通常出勤を命じられた
・同じ業務に関わっているにもかかわらず、他の社員はローテーションで自分だけ毎日出社
・適切な予防策をとらない状態での密室での大人数の会議や、酒席をともなう接待の業務命令
労働者の安全に配慮するのは会社の“義務”であることを忘れずに、自分と家族の健康のために、しっかり自己主張してほしい。また、今後、感染による後遺症の補償などを求める動きが広がる可能性もあるので注視していこう。