■保健所からの連絡は5日目だった
「自宅放置死遺族会」に所属する東京都杉並区在住のB子さん(70)も、昨年8月7日に息子(45)を失っている。
「息子は音楽が好きで7年前にライブハウスをオープンしたんです。7月31日に陽性がわかり、家族にうつしたらいけないからと、店でひとり療養していました。保健所から電話はあったんですが、出ることができず息子からかけなおしたら『折り返しを待ってください』と言われた、と。連絡がとれないと不安がっていました」
当時、新規感染者数は急激に増えているタイミングだった。
「ようやく5日目に、保健所からショートメールで『いまからうかがいます』と連絡が来て。息子は強い倦怠感があったので、ホッとしていました。でも結局、夜になっても来ませんでした。息子が亡くなったのは、その2日後です」
B子さんが息子にラインを送っても既読にならず、店を訪ねていったら亡くなっていたという。
「保健所からの報告では、息子のマンションだけ訪ねて該当者がいなかったので追跡を打ち切った、と。店や家族の連絡先は見落としていたそうです。打ち切る前に、ひと言でも家族に連絡がほしかった」
『倉持仁の「コロナ戦記」』(泉町書房)の著書もある「インターパーク倉持呼吸器内科」院長の倉持仁さんはこう指摘する。
「オミクロン株は肺炎になりにくいといわれますが、感染早期から有症状期、後遺症の状態まで把握できていない今は、どのような方がハイリスクなのかわかりません。新型コロナは、早期に検査して診断し、適切に治療すれば死なずにすむ病気。そのために、“検査・隔離”を徹底して感染をコントロールし、国民皆保険制度の下で等しく医療を受けられる態勢を今からでも早急に作るべきです」
2月1日、福岡市で自宅療養中の男性が自宅で亡くなっていたことを福岡市が明らかにした。第6波に入ってから、少なくとも千葉県や愛知県、兵庫県などで、自宅療養中に在宅死した人が出ていることがわかっている。一刻も早い対策が待たれる。
【「自宅放置死遺族会」のお知らせ 】
自宅放置死遺族会は、新型コロナウイルスに感染し、入院など必要な治療や健康観察を受けられず自宅で亡くなった被害者の遺族の会です。同じ経験をされたご遺族の方、一緒に話しませんか?
メール:jitakuhouchishi@gmail.com
ご遺族専用電話:090-3352-6145(午前10時~午後5時まで)