戦争に便乗して強まる改憲論…憲法学者「自衛隊を憲法明記は必要ない」
画像を見る かねてから憲法改正を訴えてきた安倍元首相

 

■ナチスの全権委任法に等しい自民党の緊急事態条項

 

「特別な事態のときに、(国会議員の)任期を延長していなかったら、意思を決定する人間がいなくなってしまう。その穴を埋めなきゃならないというのが緊急事態(条項)で憲法改正で入れるべきだと」

 

4月10日、『日曜報道THE PRIME』で、自民党の新藤義孝政調会長代理はこう主張した。「4つの『変えたい』こと 自民党の提案」にも挙げられている「緊急事態条項」の創設もまた、改憲派が根拠のひとつとしていることだ。

 

「たとえば、自民党の改憲草案に書かれている緊急事態条項は、内閣が宣言すれば、国会から立法権や財産処分権などを取り上げることができてしまう。ナチスが独裁のために作った全権委任法に等しい恐ろしいものです」(小林さん)

 

そもそも、現行の憲法には「公共の福祉」を定めた12条などがあるので、法整備で十分に緊急時の備えは可能だ。実際に、憲法は国民に財産権を保障しているが、災害時は「災害対策基本法」を根拠に、倒壊した建物や壊れた車などの私有財産を、本人の許諾なしに処分することができる。

 

「衆議院解散中に緊急事態が起こった場合に備え、憲法で『参議院の緊急集会』が定められているので、国会議員の任期の延長も不要です」(小林さん)

 

「いつ終わるかわからない長期的な緊急事態には対応できない」(新藤氏)という主張もあるが、長期間にわたって選挙ができなくなるような事態が具体的にどのようなのか示されることはなく、「壊れた議論」(小林さん)だという。

 

こうした具体的に想定もされていない“架空の危機”よりも、歴史上にも多数存在する、緊急事態に政府に権限を集中させる法令の悪用によって独裁制が始まるという“現実的な危機”こそ警戒すべきだろう。ウクライナの戦争に便乗した、乱暴な改憲論に騙されてはいけない。

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