■記憶力が極端に低下し、ドラマも見れない
2人のようにだるくて動けないといった強い倦怠感は、コロナ後遺症の典型的な症状。倦怠感のほかにも、気分の落ち込み、思考力の低下、頭痛、息苦しさ、不眠、脱毛など、その症状は多岐に及ぶ。
これらに加えて、深刻な後遺症が、“認知障害”だ。
「新しい薬の名前が覚えられなかったり、医療関係の書類を読んでも頭に入らなかったり、仕事に支障が出て困っています」
そう打ち明けるのは、愛知県在住の看護師、沢口あかりさん(仮名・42)。沢口さんが罹患したのは、’20年7月。38度5分くらいの熱が2週間続き、酸素飽和度も入院が必要な93%くらいまで低下。しかし、「熱がある人は病院に来ないで」と言われ、診てもらえなかったという。
「陰性になっても、発熱、耳鳴り、頭痛、ひどい倦怠感などが続いて、洗濯物一枚干すのもやっと。ご飯も食べられなくなり、この2年で7キロやせ、勤めていた病院も辞めざるをえませんでした」
コロナに感染して半年ほどたったころ、認知症のような症状が現れ始めた。
「高校生の娘に何度も同じことを質問して、『それ、さっき話したよ』と注意されることが増えました。ついさっきのことなのに、聞いた記憶がまったくないんです。それから、連続ドラマを見ても、登場人物の名前も先週のストーリーも覚えていられなくなりました。毎週見ても話が続いていかないんです」
娘の学費のこともあり、昨年の4月から再度働き始めた沢口さん。しかし、以前ならできたマルチタスクがこなせない。
「ひとつのことをやっているときに別のことを頼まれると、先にやっていたことを忘れてしまうんです。周りは後遺症のことを理解してサポートしてくれるんですが、迷惑をかけていることが心苦しくて……」
記憶力が極度に低下した沢口さん。人と約束するときは、忘れないように携帯のアラームを必ずセットし、駐車場に車を止めたら、周囲の風景を写真に撮ったりメモをして、何とか暮らしているという。