■退職金控除や配偶者控除も見直される見通し
さらに、老後の頼みの綱である退職金にも魔の手が伸びている。
現在は、勤続年数が長いほど退職金にかかる税の控除額が増える仕組みだ。しかし「勤続年数にかかわらず控除を一律に」という案が税制調査会で議論されている。
「ハードルは高いですが、雇用の流動性を高めるという政府の方針もあり、最短で再来年春の実施もありえます」(古賀さん)
加えて、生活により大きな影響を及ぼすのが、配偶者控除の見直しだろう。
現在、所得が38万円以下(給与所得のみの場合は年収103万円以下)の配偶者がいる納税者は、38万円の控除を受けられる。しかし、第19回の税制調査会の資料内では配偶者控除の見直しが提示され、その選択肢のひとつとして“廃止”が提示されているのだ。
消費税率アップや控除などの廃止によって、私たちの家計負担がどれほど増えるのだろうか。
’21年の家計調査(総務省)を基に試算すると、世帯主が50~54歳の世帯の場合、消費税が15%になると、年21万6076円支出が増える。さらに、これらの世帯(世帯主の月額平均給与55万1422円)で配偶者控除がなくなった場合、所得税と住民税を合わせて年間10万9千円の負担増となる。2つの増税だけで、年間32万5076円も家計負担が増すのだ。
また、第二の税とも呼べる保険料の値上げも忘れてはならない。
政府は10月18日、国民年金の保険料納付期間を、5年延長して45年とする方向で議論を始めている。さらに、65歳以上の高齢者が、毎月支払う介護保険料の引き上げの議論まで進んでいるのだ。
「結局、進むのは抵抗できない低所得者層にばかり負担が重くなる税制改革。岸田首相は当初、富裕層に課税する金融所得課税を実施すると言っていたのに、結局、反発が大きく引っ込めてしまった。本来は、そういうところから課税すべきなのです」(浜さん)
なぜ、岸田首相は決断できないのか。
「岸田首相は安倍派の顔色ばかり見ながら、失敗したアベノミクスを引きずり続けている。財政は悪化するし、成長もしないので、こうやって庶民に増税するしかなくなっているんです」(古賀さん)
このままでは、国民が重税に押しつぶされてしまうーー。