■新変異種の驚くべき特徴とは……?
「ケルベロスとグリフォン個々の特徴の違いまでは、まだデータがありませんが、この2つの新変異種はこれまでのオミクロン株よりも感染力が強いという報告があるのです。実際、ここ最近の私たちの医療現場では、コロナ感染者1人から、瞬く間に周囲の多くの人に感染が広がる印象があります」
感染力は増強しているが、重症化率などの毒性はこれまでのオミクロン株と同等とされる。
さらに、新変異種には警戒すべき特徴があると岡教授は指摘する。
「今回の新変異種はワクチンの免疫効果をすり抜けて感染させてしまう“免疫逃避”が従来株より高くなっていると考えられています。つまりワクチンの感染予防効果が弱くなり、再感染リスクも上がってしまうのです」
オミクロン株自体の重症化率は、その前に流行したデルタ株より、大幅に下がっているといわれているが、この免疫逃避の高さから、「決して侮ってはいけない」と岡教授。
「重症化率が下がっているといっても、感染者数自体が5倍、10倍と膨らめば、重症者数や死者数も増加してしまいます。感染者数が最大になると予想される第8波では過去最大の死者数が出てもおかしくない状況です」
事実、共同通信の集計では今年のコロナ死者数は3万人を超え、2021年の1万4909人から2倍以上に増えているのだ。
さらに岡教授は「医療ひっ迫」への強い懸念を示す。
「感染力が強くなっているため、医療従事者にうつればスタッフの数が足りなくなります。現在、病床使用率が報じられていますが、100%埋められるだけの人手が足りない状況。すでに医療ひっ迫状態に差しかかっているため、感染者が増えれば、医療崩壊を招いてしまう恐れがあるのです」
そうなるとコロナ以外の傷病も含めた「死亡者の激増」という最悪の事態にーー。
「軽症や無症状感染者が増えれば、高齢の方や基礎疾患のある方に感染して重症化、あるいは死亡につながるケースが増えるでしょう。すると急病や事故で搬送され、救急対応が必要な患者さんなど、コロナ以外の医療が手薄になってしまうことも目に見えています」
冬場は、特に高齢者などに脳卒中や心臓発作などが起こりやすい。
そこにコロナとインフルエンザの同時流行となれば、体力のない高齢者や基礎疾患のある人を中心に、命を落とす人が激増する恐れがあるのだ。
それを食い止めるため、私たちができることを岡教授はこう説く。
「流行状況に応じたマスクや消毒、行動自粛を各自で見直したうえで、やはりワクチン接種が重要です。
新変異種は免疫逃避が高いとはいえ、追加のワクチン接種で一時的に感染予防効果を高めることが期待でき、重症化を防ぐ効果があります。目安はブースター接種で重症化予防効果が高まる『3回目』までをきちんと接種しておくこと。
4回目以降は、流行のピークを読みながら、そのヤマの直前に打っておくことが望ましいでしょう」
そのタイミングとは、第8波でいえば「まさにいまから年末年始のスパンです」と岡教授。
コロナ第8波を抑制するカギは新変異種の特徴を踏まえた、私たちの日々の感染対策にあるのだ。