「弟はなぜひとりで死んだのか?」コロナ放置死遺族の真相を探る旅に密着
画像を見る 弟の友人である比嘉さんに生前の様子を聞いた(写真:今泉真也)

 

■「いまも弟と一緒に生きてくれている人が」

 

善彦さんをひとりで逝かせた無念さは消えないが、「ちゃんと弟を診てくれていた先生がいた」ことに高田さんは救われたという。善彦さん亡きあとの沖縄を訪れ、高田さんには、どんな心境の変化があったのか。

 

同日、大阪に帰る間際の那覇空港で、改めて尋ねた。

 

「コロナさえなかったらという悔しさは今も変わってないし、一生変わらへんと思います。でも、弟の人生は短かったけどいい人生やったかも、って。沖縄に来て、そう思えるようになりました」

 

高田さんは、そんな心境に至るまでは、「終活している心境だった」という。

 

「弟が他界して1年くらいは、私、どうやって生きていたのか覚えていないんです。支えてくれる人もいる一方で、信頼していた人から『弟、放置死したんやな』『(メディアに出て)有名になったな』とか言われてね。もう、すべてなくした気がして、生きる希望を見失っていました」

 

そんななかでも踏ん張れたのは、「沖縄にお礼に行くまでは死ねない」という思いがあったから。

 

「あれだけ温かく送ってくれたんやから、お礼はしないとあかん。そう思って踏ん張っているうちに、お医者さんや弁護士さん、議員さん、メディアの方など遺族会に協力してくれる人たちも増えてきて。弟の他界から1年過ぎたころから少しずつ、そよそよと生きる希望の風が吹いてきたんです」

 

そして満を持して訪れた沖縄で、高田さんは、生きる希望の風を全身で受け止めた。

 

「この沖縄で、弟と一緒に生きてくれた友人たちに実際に会ってみて、本当に温かい人たちだとわかった。ひとつの命をみんなが大事に送ってくれたし、いまもなお弟と一緒に生きてくれている。だから弟は、ひとり寂しく逝ったわけじゃない。そう思ったら、人生はまんざらじゃない。私ももうちょっと生きてみよう。そう思えるようになりました」

 

【後編】「冷たくなった息子を心臓マッサージした父」コロナ放置死遺族の悲哀へ続く

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