「冷たくなった息子を心臓マッサージした父」コロナ放置死遺族の悲哀
画像を見る 弟の友人である比嘉さんに生前の様子を聞いた(写真:今泉真也)

 

■思いやりでしかコロナには勝てない

 

高田さんが、いまいちばん心配しているのが、遺族会に参加している遺族をはじめ、全国に大勢いるであろう「医療にアクセスできずに家族をコロナで亡くした遺族たち」のこと。

 

「ちょっと前までの私みたいに、もういつ死んでもいいみたいな、暗いトンネルから抜け出せない遺族は多いと思う。人は、つらいままでは生きていかれへんから」

 

遺族会のなかには、記者が話をうかがったほかにも、息子さんを亡くして、たったひとりになった高齢の女性もいる。

 

「その方は『自分はもういつ逝ってもいい。死ぬまでマスクは外さない』っておっしゃって。でも、他界した息子さんだって、お母さんが苦しみの中で生き続けるのはつらいはず。きっと、幸せに生きて、って思っているはず。だから私は今後、ご遺族が少しでも生きる希望を見いだせるお手伝いをしたいんです」

 

そのひとつとして遺族会では、ネット署名を始めるべく準備を進めている。

 

「多くの人が、共感してくれる内容の署名にしたい。この世に命より尊重されるものはないから、誰だって必要な医療は受けたい。大切な人がコロナで治療も受けられずに亡くなるなんてイヤじゃないですか。そんな悲劇を少しでも減らすために、〈マスク外そう〉じゃなくて、大切な人を感染させないための行動をとりませんか、と。人の思いやりでしか、コロナ禍を乗り越えられないと思うから」

 

コロナ禍によって、人間のおろかさが浮き彫りになったが、同時に人の温かさも身に染みた、という高田さん。「人間がコロナに打ち勝つためには、人の良心にかけるしかない」と、今、思い始めている。高田さんは信じて進む。人の良心を。たった一つの命を大切にできる世の中にするために─―。

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