トラベルドクター・伊藤玲哉さん「人生最期の旅、ご案内します」
画像を見る 「自分はもう長くないから、家族と思い出を作っておきたい」と旅行を希望した保田正さん。写真左には娘の彩さん。2人のお孫さんも。右端は旅を支えたトラベルドクター伊藤さん

 

■「旅行先の写真では笑顔で元気な父だから、それを見て自分も頑張れる」と娘が語った

 

保田正さんの長女・西川彩さんはいま、「あの旅は、父には夢のような時間だったと思います」と、熱海旅行を笑顔で振り返る。

 

「父は、ずっとお風呂に入れなくて、シャワーが1週間に一度と、旅行前はすごく状態が悪かったんです。それが熱海では目の前に海のある露天風呂につかっていて、すごく気持ちよさそうで、びっくりしました」

 

この部屋付きの露天風呂スペースには、6歳と2歳のお孫さんもやってきた。入浴する保田さんに付き添っていた伊藤さんが語る。

 

「お孫さんたちは『正さん、正さん』と呼びながらはしゃいで、お姉ちゃんは背中を優しく流してあげていましたよ。

 

最初は幼い印象だったお孫さんが、おじいちゃんの車いすをちゃんと押してくれたりしたので、帰りの新幹線ではお姉ちゃんに任せっきりで大丈夫でした。お孫さんにとっての熱海は、ただの観光地ではなく、おじいちゃんと行った特別な場所になるのでしょうね」

 

それにしても彩さんは、トラベルドクターによる旅行への不安はなかったのだろうか。

 

「本人が行く気満々でしたし、伊藤先生にすべてお任せでしたから、不安は全然なかったです(笑)。父は天真爛漫というか子供みたいな人で、旅行や食べること、飲むことが大好きだった。夕食ではビールで乾杯もして、『明日はどこ行こうか』とか、楽しそうでした」

 

帰宅して2週間後、保田さんは息を引き取ったという。それから1年半。

 

「あっという間ですね」

 

と彩さんは話す。

 

「いまもすごく寂しいですけど、あのとき一緒に旅行ができたから、よかったなという気持ちが大きいです。熱海での写真を見ると弱々しい父じゃなくて、笑顔で元気な父だから、私も頑張れます」

 

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