末期がんや難病の患者に希望を与えるトラベルドクター・伊藤玲哉さんの挑戦!
画像を見る 渋谷区南青山のオフィスにて。伊藤さんはストレス解消にやけ食いをする癖があり、ずいぶん太ってしまったと笑う

 

■旅行に付き添うために介護士の資格を取り、写真学校にも通って準備を進める

 

父の跡を継ぐことから、伊藤さんは大きく人生の舵を切ったのだ。

 

「ロールモデルのないなかで、研修医の2年目には、いずれ麻酔科医の道に進むことを決めました。外科医のサポートをする麻酔科医なら、日程の自由がきくし、旅行中の痛みの緩和や全身管理にも役立つから」

 

京都での3年間を終え、28歳で母校の麻酔科の医局に入った。

 

その後の2年間は大学病院に勤務するかたわら、旅行業をはじめ、パソコン操作や動画編集を勉強。介護士の資格も取った。写真学校にも通ったのは、旅行中の写真を撮るカメラマンも務めるためだ。

 

’19年3月に大学病院を退職。フリーの麻酔科医として週1回、病院に通うスタイルだ。その後、都内のグロービス経営大学院に入学。

 

それまでビジネスには興味がなかったんです。でも授業を受けてみて、思考法やプレゼンテーションの訓練、世の中の仕組みを作るための学びができました」

 

クラスには、大手旅行会社や航空会社、保険会社などの人もいて、異業種との交流は刺激になった。

 

その年の12月には、東京都主催の若き起業家輩出のためのビジネスプラン・コンテスト「TOKYO STARTUP GATEWAY」決勝大会に「トラベルドクター」として出場。数百人の前でスピーチをし、見事に最優秀賞を受賞し、壇上で小池都知事の祝福も受けた。

 

「公に認めていただいたことで、少しずつ自信になっていきました。大会には父も呼んだんです。『いつ(クリニックを)継ぐの?』が口癖のようだった父が、応援してくれるようになりました」

 

翌’20年12月、トラベルドクター株式会社を設立。コロナ禍で活動が制限されるなか、まずは広く事業内容を知ってもらうために、ボランティアで行うプロジェクト「たびかな(旅叶)」を同時に立ち上げた。医療、介護、旅行関係などの有志が集まり、旅行資金はクラウドファンディングで調達した386万円。

 

こうして数々の患者の願いをかなえるための活動がスタートした。

 

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