1月27日、新型コロナウイルスの感染法上の位置づけが、現在の“2類相当”から季節性インフルエンザ並みの5類に引き下げられることが発表された。引き下げは5月8日からの予定だ。
これにより、大きな議論を呼んでいるのが、“マスク着用”の是非だ。岸田文雄首相(65)は、「個人の判断に任せる」と述べた。
「昨年2月に米国ハーバード大学などがまとめた研究によると(表参照)、学校でのマスクの着用義務を解除した地域では、着用義務を続けた地域と比べて、感染者数が倍増したことがわかっています」
そう語るのは、『誰が日本のコロナ禍を悪化させたのか?』(扶桑社)の著書もある、工学博士で著述家の牧田寛さんだ。牧田さんは「倦怠感や思考力低下などの症状が出る“コロナ後遺症”」の増加を懸念している。
「現在、コロナの感染者がもっとも多いのは、10歳以下と10代の子どもたちです。ノーマスクで活動した場合、感染力の強い株だと、クラス全員が感染すると言っても過言ではありません。子どもの後遺症発生率は1〜5%程度。合計600人(1学年100人)の児童が在籍している小学校の場合、再感染者も考慮して感染率150%とすると、コロナ後遺症に苦しむ子どもの数は10〜45人となる計算です」
現在、全国の小学生は約622万人。同様に試算した場合、最大で約46万人に後遺症が出る可能性が。
「岸田首相は、アメリカをマネしてマスクを外させたいのでしょう。しかし、アメリカの場合、公費での空気清浄機の設置のみならず、保護者らが自主的に手製の高性能な空気清浄機を設置する対策を行ってきました。マスクしか防護策がない日本と状況が異なるのです」
日本の第8波の死者数は、昨年12月1日から1月31日までのわずか2カ月間で、約1万8千人にのぼった(累計約6万8千人)。仮に感染者数が倍増し、致死率が変わらなかった場合、7月ごろから第9波の死者数は4万人を超える恐れがあるのだ。
■公費負担終われば薬の使用も躊躇
もうひとつの懸念は、5類になることで生じる検査費と治療費だ。当面は公費負担を続けるというが、段階的に見直していくという。都内の救急病院でコロナ患者などの対応にも当たっている医師の谷川智行さんは、公費負担の終了後に検査や治療控えが増えることを懸念している。
「重症化リスクのある方に処方する抗ウイルス薬のラゲブリオは、1日あたり約1万8千円で、5日間服用しますから、計約9万5千円。3割負担でも約2万8千円の出費に。そうなると、抗ウイルス薬を飲むべき人でも躊躇して、症状の悪化を招いてしまいます」
同じく、重症化リスクの高い患者に使用されるレムデシビル(1本・約6万3千円)も、5日間6本使用すれば、計37万8千円。3割負担で約11万3千円だ。
「重症化して入院した場合はより費用がかさむことに。高額療養費制度が適用されるとしても患者にとって重たい負担になるでしょう」
“平常化”はまだ先だ。自己防衛を忘れないようにしよう。