東日本大震災から12年を迎えた今年。復興庁が4月に公表した資料によれば、震災関連死を含む死者は1万9765人、行方不明者は2553名。そして現在もなお、3万1000人が避難生活を続けている。
震災のあった3月11日は全国各地で犠牲者に哀悼の意が捧げられ、日本中が鎮魂の祈りに包まれた。そんななか、SNSに投稿された“ある不適切動画”が物議を醸したのだった。
少年が笑いを堪えながら、「東日本大震災のこれを観て生きている方、とても嬉しいです。また死んでしまった人はお墓で聞こえないと思うがww ほんとに悔しいです」とカメラに向けて語る。動画には「3.11」のテキストが添えられ、少年は合掌のポーズで締めくくった。
もとはInstagramのストーリーズに投稿された動画だが、11日深夜にTwitterでインフルエンサーが取り上げると瞬く間に拡散。“被災者や犠牲者を侮辱している”といった批判の声が、ネット上で相次ぐ事態となった。
すると翌12日、この少年が通う埼玉栄高校は「本校生徒による不適切動画掲載に関するお詫び」と題する謝罪文を公式サイトに掲出。そこには、お詫びの文章が次のように綴られていた。
《このようなことが二度とおこらないように、当該生徒も含め、全校生徒に対してよりきめ細かな心の教育による道徳心の向上を図ると共に、ネット社会、特にSNSに対するリテラシー教育を更に充実させていく所存です》
当時、本誌の取材に応じた埼玉栄高校の教頭は、謝罪文を出した経緯をこう説明していた。
「本来であれば、生徒のSNS上のトラブルについて学校側がコメントすることはほとんどありません。ですが、今回は内容が社会的な問題であり、3月11日付近にこうした不適切動画を投稿してしまいました。生徒を預かっている学校として、ちゃんとした教育を施せていなかったことに対して大変申し訳なかったとの意味合いで、お詫びを掲載させていただきました」
また、不適切動画に関わった生徒の処分について問うと、「現在、学内で聞き取りの調査をしたり、色々と会議を持ったりして検討している最中で、まだ具体的には決まっていません」とのことだった。
あれから1カ月。世間では新学期が始まったが、件の生徒はどうなったのか――。改めて4月7日に教頭に問い合わせると、「処分については部外秘ということで、外には申し上げる予定はございません」と回答。生徒の様子については、「十分に反省していると思います。ここ最近は直接その生徒と会っているわけではないので、状況は正確には掴んでおりませんが」との返答があった。
一方で、現在までに学校でどのような指導を実施したのかと問うと、「これからになりますが、今月にSNS教育の授業を行う予定です。先だって3月には、東日本大震災で被災した人のお話などをビデオで視聴したりする教育も行いました」と教えてくれた。ただ、東日本大震災を伝えるビデオ授業において、不適切動画に関わった生徒は自宅待機中だったため欠席していたという。
まだ先の長い人生。今回の失敗を教訓に、少年の行動が変わることを願うばかりだ。