■東京オリンピックの負の連鎖が続く
今年2月には、外苑の周辺住民らを含め約60人が原告となり、神宮外苑再開発差止訴訟を起こした。斎藤さんも原告のひとり。原告団長で実業家のロッシェル・カップさんも、こう憤る。
「神宮外苑再開発は、東京オリンピック招致の悪しき副産物です。むしろ、神宮外苑を開発するために、東京オリンピックを誘致したのではないか、とさえ疑いたくなります。というのも、神宮外苑は自然環境を守るための“風致地区”に指定されており、元々は高さ15mのまでの建築物しか建てられませんでした。しかし、新国立競技場を建て替えるという口実で、競技場の場所だけでなく神宮外苑全体の高さ制限まで緩和してしまったからです」
21年に開かれた東京オリンピック・パラリンピックでは、大会組織委員会の元理事が、スポンサー企業から賄賂を受け取っていたり、談合が発覚したりして、一大汚職事件へと発展したことは記憶に新しい。
前出の斎藤さんは、こう付け加える。
「政府や企業がスポーツを通じて平和や持続可能な社会をアピールしている裏で、実際にはそれと真逆のことが行われていることはよくあります。しかし、祭典が終われば〈いい大会だったね〉で終わってしまう。これを“スポーツ・ウォッシング”と呼びます。つまり、スポーツが金儲けのために利用されているのです」
歴史ある球場やラグビー場、そして樹齢百年の樹木を守るためにも、利益追従の再開発を止めなければならない。
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