マイナンバーカードに関するトラブルが続出しています。
コンビニで住民票などを発行する証明書取得サービスでは、別人の証明書が交付されるトラブルが東京都足立区、神奈川県横浜市、川崎市など7つの自治体で起こりました。また、病院でマイナ保険証を使うと、別人の情報が出てくる事例は約7千300件(’21年12月~’22年11月)、公金受取口座にも、別人の口座が紐づけられる誤登録が11件ありました。
河野太郎デジタル大臣は「再発防止に取り組む」と言いますが、なんとなく他人ごとという気がします。
というのも、マイナンバーカードを使った行政手続きに欠かせない「マイナポータル」の利用規約には、「利用者が負った損害は、デジタル庁の故意や重過失によるもの以外は責任を負わない」と記載されているからです。一連のトラブルはシステム業者や入力担当者などのミスで、デジタル庁に責任はないと言いたいのでしょう。
■国民皆保険制度が瓦解するかもしれない
そんななか参議院では「マイナンバー法等一括法案」が審議中です。これが成立すれば’24年秋から従来の健康保険証が廃止され、マイナ保険証に一本化されます。
ですが、先述のとおり医療現場ではトラブルが頻発しています。大阪府保険医協会の調査では、医療機関の半数以上で「トラブルあり」。70%以上が従来の保険証の廃止に反対しています(’23年5月)。
また、高齢者施設にも反対の声があります。病院受診に必要な保険証は、現在84%の施設が預かっていますが、マイナ保険証には暗証番号も必要です。個人情報の紐づいたマイナ保険証と暗証番号、両方の管理は94%の施設が「できない」と主張しています(’23年4月・全国保険医団体連合会)。
さらに、障害のある方はマイナンバーカードの申請さえ難しいと訴えています。たとえば顔写真に車いすのヘッドレストが写っているために申請を却下されたり、全盲で黒目がない方が「黒目が見えない」と何度も撮り直しをさせられたり。障害に対する配慮がまったくありません。
現場や当事者の声に耳を傾けず、マイナ保険証に突き進んだ先にあるのは、私は国民皆保険制度の崩壊ではないかと危惧しています。
マイナンバーカードは5年ごとに更新が必要です。若い方のなかには、忙しさから更新のタイミングを逃す方や、健康だから保険など不要と考え更新手続きをしない方がいるかもしれません。徐々に無保険者が増えていくでしょう。
高齢者も、病院に行くたびに必要なマイナ保険証を紛失したり、申請時に登録した暗証番号を忘れたり、更新できずに無保険に陥る方が増えていって、国全体に「無保険でもいいか」という空気が広まる恐れがあるのです。
国民が広く保険に加入し、上質な医療を割安で受けられる日本のよさを守るため、従来の保険証廃止には断固反対したいと思います。