1月2日17時47分ごろに羽田空港で起きたJAL機と海上保安庁航空機の衝突・炎上事故は、海保機の乗員5人が亡くなる大惨事に誰もが胸を痛め、冥福を祈った。
同時に、JAL機の乗客乗員379人の全員が脱出できたことには、14人の負傷者が出たとはいえ、日本中が胸をなでおろしたことだろう。
その後、国土交通省・運輸安全委員会、JALが聞き取りを始め、警視庁は業務上過失致死傷容疑で現場検証や調査に入った。
現在までの国交省やJALへの取材報告をまとめれば、まず海保機が、管制からの《「ナンバーワン。C5上の滑走路(手前の)停止位置まで地上走行してください」》(1月9日、TBS NEWS DIG)という指示に対し《「滑走路への進入許可」だと誤って認識》(同)して滑走路に進入した可能性が指摘されている。
そのまま《約40秒にわたって滑走路上で停止していた》(1月5日、読売新聞オンライン)ことが、当時の映像やデータで判明している。
一方で管制は、滑走路への海保機の進入を検知した監視システムの画面が赤色に切り替わったことを《管制官は見落とした可能性がある》(1月8日、産経新聞)
他方、JAL機のコクピットにいたパイロット3人は、約40秒の間、進路である滑走路上に停止していた海保機を《「視認できなかった」と話していることがわかったほか、「衝突直前に一瞬、何か横切ったような違和感をおぼえた」と話すパイロットもいた》(1月4日、ANN NEWS)という。
しかしその後のJALの聞き取りには《「他の航空機への離陸許可の通信はなく、着陸に集中できる状態だった……滑走路に異常はなかった」とも話した》(1月12日、日テレNEWS)とされる。
さらに《JAL機パイロットに同社が聞き取った内容をまとめた文書》を入手したという毎日新聞は1月14日、パイロットが《「着陸まで滑走路上に異常は感じなかった」と証言》《「通常通りに着陸した直後に一瞬何かが見え、強い衝撃があった」と説明》と報じている。
ところで、事故の原因究明に欠かせないボイスレコーダーとフライトレコーダーは、海保機からは1月3日に回収されたが、JAL機は《フライトレコーダーを3日に回収》(1月5日、ロイター)、ボイスレコーダーは《6日行われた機体の撤去作業の際》(1月6日、TBS NEWS DIG)になってようやく回収されている。
なぜこのように痛ましい事故が起きたのかは、海保機、管制、JAL機のやり取りやボイスレコーダーなどの調査・解析から原因究明されるのを待つしかないが、私たちにとって、この3者で最も近い存在は、乗客として利用することがあるJAL機だろう。
JAL機のパイロットは約40秒の間、滑走路上で停止していた、進路上の障害物となる海保機を「視認できなかった」と話している。
日本経済新聞1月9日ウェブ公開「検証・羽田空港衝突事故」によれば、海保機が滑走路上に停止した衝突40秒前、JAL機は2.3キロの距離まで迫っていたことが、航跡データやライブカメラの記録でわかる。高度は約84メートル、速度は毎時224キロだった。
つまり衝突地点から2キロ以上も離れた上空を飛行していたJAL機が、それから40秒近く、進行方向に停止している障害物を発見できなかった可能性があるのだ。
事故発生は18時前と夜間の出来事だった。
本誌は緊急に、2人のパイロット(現役、OB)にコンタクトを取り、話を聞いた。