初動が遅いという批判も受けた岸田首相(写真:共同通信) 画像を見る

「とにかく救助の手も重機も足りず、あちこちで家屋が倒壊したままの状態でした。生き埋めになっている家族を案じて、なすすべもなく立ちつくす方たちの姿があちこちに見られて……。痛ましい光景でした」

 

そう語るのは、ジャーナリストの藍原寛子さんだ。藍原さんは、オーストラリア公共放送SBSのプロデューサーとして1月5日に被災地入りし、被害の大きかった輪島市や穴水町を取材した。これまで多くの被災地を取材してきた藍原さん。過去の震災と比べて“初動の遅れ”を感じたという。

 

「2011年の東日本大震災のときは、2日後に“激甚災害指定”されましたが、今回、岸田首相が激甚災害指定の方針を固めたのは発災から7日後でした。

 

2016年の熊本地震のときは、3~4日目で約2万人の陸上自衛隊が投入されましたが、今回は9日時点で約6300人。被災地を回っても、自衛隊のトラックをせいぜい5〜10台見かける程度でした。ヒト・モノ・カネを投入できていなくて、自助でなんとかしろという感じです」

 

■コロナ時のときのように中抜きされないか注視が必要

 

なぜ、これほど対応が遅れたのか。

 

「ひとつには、道路の陥没がひどく、修復が遅れていることが影響しています。私が被災地を訪れたときも、タイヤが道路の亀裂にはまってパンクする車両が続出しました。そのため、支援の手が行き届かない。本来は、いち早く自衛隊がヘリで物資などを輸送すべきですが、命令が出ない限りは動けないため、対応が遅れたのです。 岸田首相は、災害規模を甘く見ていたのではないでしょうか」

 

被災地で必死の捜索が続いていた5日、岸田首相は3つの新年会に連続で出席。危機感の欠如を批判された。被災地を視察したのは14日になってからだった。

 

政府は来年度予算案に盛り込まれた予備費を、現状の5千億円から1兆円に倍増させ、“復旧と復興”のために使う方針だ。予備費とは、災害や金融危機など不測の事態に備えて、使い道を決めずに毎年度の予算に計上するお金のこと。

 

社会保障と税に詳しい鹿児島大学教授の伊藤周平さんは、「復興以外のことに流用されてしまう可能性がある」と懸念を示す。

 

「コロナ禍では、計上された14兆円を超える“予備費”のうち9割が使途不明になっています。というのも、予備費は国会の審議を経ずに使途が決められるため、復興とは関係のないものに流用されていてもわからないからです」

 

コロナ禍では、感染対策や生活支援のためにさまざまな事業が行われたが、政府と関係の深い企業が予算から“中抜き”したことも問題となった。

 

「予備費が正しく復興のために使われるか、監視が必要です」

 

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