日経平均株価は2月22日に3万9千円台になり、史上最高値を更新しました。’89年12月以来、34年ぶりの更新です。
日経平均株価は東京証券取引所の上場株から選ばれた225銘柄の平均株価で、日本株の代表的な指標です。’24年は上昇が続き、2月16日に最高値にあと一歩と迫っていました。日本証券業協会の森田敏夫会長が2月21日「日経平均株価は4万2千〜4万3千円もありえる」と発言するなど、株高がまだ続くと見ているようです。
日本株の高騰にはいくつかの要因があります。
まず、日本は円安で外国人投資家は日本株を買いやすい状態です。近年中国の景気が悪化し、これまで中国にあった資金が日本に流れてきて、株価を上げています。
また、日銀は金融緩和政策を続ける方針ですし、時価60兆円もの上場投資信託を買って日本株を買い支えています。投資家にとっては大きな安心材料でしょう。
さらに、日本企業の業績も好調なうえ、新NISAに資金が流入して相場を押し上げているのです。
ただ、日経平均株価は史上最高値ですが、市民生活は「好景気」とは思えない状況です。34年前、バブル景気の絶頂期と比べると、悲しいくらい冷え切っています。
この違いは、バブル以降の“失われた30年”で社会が変わったことによります。バブル期は「一億総中流」で、誰もが自分の生活を「中」だと思っていました。貧富の差がなかったからこそ、誰もが好景気の恩恵を受けたのです。
ですが、いまや格差社会です。株高の恩恵はわずかな富裕層が独占し、多くの国民は厳しい状況に追い込まれています。
株価の行方は楽観的な見方もありますが、実は予測ができないものです。先ほどあげた株高の要因はよい側面に着目していますが、物事には両面が存在します。
たとえば、今は日本株を買ってくれる外国人投資家を好材料と見ていますが、逃げ足の速い外国人投資家は何かのきっかけで一気に売りに転じて、株価が崩れる悪条件になる可能性もあります。
国内も今は企業業績が好調ですが、実質賃金が21カ月連続のマイナス(’24年2月発表、厚生労働省)で国民の消費する力が弱っています。物が売れず企業倒産が続く未来が来るかもしれません。
何か一つでも悪条件に転じたら、堰を切ったように多くの“好材料=えくぼ”が“悪条件=あばた”に豹変。バブル崩壊やリーマンショックのような大暴落が起こる危険性をはらんでいるのです。
’23年4月に“投資の神様”と呼ばれるウォーレン・バフェット氏が来日。日本株への積極投資を推奨する一方で、こう述べました。
「投資は理解しないまま始めてもうまくいかない。最低なのは株が上がっているという理由だけで買うことだ」
投資を始める人は、この言葉を胸に刻んでほしいと思います。