すべてを解決する魔法の言葉のように「賃上げ」という言葉を使ってきた岸田首相(写真:時事通信) 画像を見る

「コロナ禍が落ち着いた2021年後半から、急激に物価が上がり続けています。しかし、物価高に苦しむ国民に、岸田文雄首相(66)は特に有効な支援策を打ち出さず『物価を上回る賃上げ』が実現するから問題ないと言い続けてきました。

 

直近では、『子ども・子育て支援金』が1人当たり月500~1000円以上の負担が生じることについても『賃上げと歳出改革で実質的な負担は生じない』と繰り返すばかりです」(全国紙記者)

 

たしかに春闘で、ホンダが満額回答し、賃上げ率は5.6%に。さらに、イオンリテールも満額回答で賃上げ率は正社員で6.39%、パート従業員の時給も7.02%になるなど、大企業からは景気のよい声が聞こえてくる。

 

だが、日本の企業の99.7%を占める中小企業では“賃上げ”は進んでいないのだ。

 

東京新聞の1月19日朝刊に掲載された、同紙と城南信用金庫が共同で行った、中小企業832社を対象にした聞き取り調査によると、昨年は「賃上げした」企業は44.2%だったのに対し、「賃上げしなかった」企業は55.8%で、半数以上を占めていた。

 

今年は「賃上げをする予定」が27.3%と賃上げする企業が半減し、「賃上げの予定はない」は34.6%で、残りは「まだ決めていない・無回答」だったという。

 

関東学院大学経済学部教授の島澤諭さんが現状を分析する。

 

「2023年、中小企業では人件費高騰による倒産が過去最多となる59件も発生。一度上げたベースは簡単に下げられないため、身の丈を超えた賃上げは倒産につながりかねない。賃上げをためらってしまう要因でしょう。体力のある大企業との格差が広がっています」

 

経済評論家の加谷珪一さんは、こう語る。

 

「現状を考えると、納得のいく数値です。それほど中小企業の経営は厳しい。日本の中小企業は、大企業が安くてやりたがらない仕事を請け負う、下請け的な側面があります。

 

その大企業ですが、この30年で売り上げが横ばいにもかかわらず、利益が上がり続けています。それは徹底的なコストカットによるもの。そのしわ寄せが中小企業にきているのだから、業績がよくなるわけがありません」

 

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