連合発表「平均5%超の賃上げ」も9割の雇用者に関係ない…給与増なしでさらなる増税と物価高の懸念も
画像を見る 賃上げの成果を誇る岸田首相だが……(写真:時事通信)

 

■9割の雇用者は連合に所属していない

 

とはいえ、連合の集計では、中小企業の賃上げ率も4.42%と高水準にある。ちまたでは「夫の会社は給料アップなんてない」といった嘆く声が多いが……。

 

「連合は労働組合の全国中央組織です。だから、労働組合のない企業に勤める人は連合とは関係なく、統計に含まれません」(荻原さん)

 

厚生労働省によると、雇用されて働く人のうち労働組合に所属する人の割合は、35年前から10ポイント以上減少して、2023年は16.3%だ。

 

また、全労働組合員のうち、連合に所属するのは68.6%。とすると、全雇用者のうち連合に所属するのは、16・3%×68・6%=11・2%にすぎない。もちろん、自営業者やフリーランスも連合とは無縁だ。つまり、連合のデータに労働者の9割は無関係。日本経済の実態を表すものとはいえないのだ。

 

だが、マイナス金利の解除も連合の賃上げ率を根拠とする。これほど固執するのはなぜだろう。

 

「たとえば、少子化対策の財源にひとり500円程度の負担が必要だと公表した際も、岸田首相は『賃上げがあるから実質的な負担はない。“子育て増税”ではない』と発言しました。賃上げという土台が必要なのでしょう」(荻原さん)

 

無理やり感のある賃上げだが、私たちにとっていいことなの?

 

「中小零細企業のうち、賃上げどころでなかった企業は、人材が離れ人手不足倒産に追い込まれるかもしれません。また、賃上げを断行した企業も、人材費コストを価格に上乗せできなければ、賃上げのツケがまわって倒産ということもありえます」(斎藤さん)

 

帝国データバンクによると、2023年の倒産件数は8497件と、前年より2000件以上増加。そのうち、人手不足倒産が260件と前年の1.9倍で、過去最多を更新している。’24年はさらなる倒産増加が見込まれるという。

 

日本総研の試算によると、“金利のある世界”が実現し、金利が2%、賃金コストが3%上昇した場合、中小零細企業の倒産件数は2割増加するという(2024年1月)。

 

「日本経済を山にたとえると“上はピーカン、下は土砂降り”です。しかも、下=すそ野は広い。一部の大企業は儲かって、中小零細企業は悲惨という二極化が進んでいます」(荻原さん)

 

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